年収の壁〝ドケチ査定〟「123万円」ではむしろ負担増?減税効果わずか1万円…国民民主党・榛葉氏「来年以降、ヒリヒリする交渉が続く」
「年収103万円の壁」をめぐり、自民・公明両党が20日決定した2025年度与党税制改正大綱で、非課税枠を「123万円」と明記した。「178万円への引き上げを目指す」とした与党と国民民主党の幹事長合意と大きな開きがあり、減税効果も年収600万円の世帯で年間1万円程度にとどまる〝ドケチ査定〟だ。政府が検討する「防衛増税」や「控除縮小」を踏まえれば、負担軽減どころか、負担増につながる恐れさえある。 【表でみる】控除額を178万円に引き上げた場合の年収別減税額 減税効果わずか 「自公両党として引き続き真摯に協議を行っていく」 20日の参院本会議で「壁の引き上げ」議論について問われた石破茂首相はこう答えた。 大綱では基礎控除と給与所得控除を各10万円拡大し、非課税枠を123万円とした。19~22歳の大学生年代の子を扶養する親の税負担を軽減する特定扶養控除は子の年収制限を103万円から150万円へ引き上げる。 大蔵官僚出身で「緊縮財政派のラスボス」と呼ばれる自民党の宮沢洋一税制調査会長は、記者会見で「それなりの成果を得た税制改正だった」と胸を張ったが、自民党内からは「国民世論があまりにも分かっていない」(ベテラン議員)との声があがる。 減税効果は年収400万円の世帯で年5000円、600万円の世帯で1万円にとどまり、家計を潤わせて消費喚起するにはほど遠い水準だ。 国民民主党の榛葉賀津也幹事長は20日の定例記者会見で、3党協議の継続について「123万円ではお話にならないということを申し伝えている。(与党側から)新たな提案が出てくるだろう。来年以降、ヒリヒリする交渉が続くんじゃないですか」と、厳しい姿勢を崩さなかった。 上武大学の田中秀臣教授は「『減税した分だけ増税する』というのが財務省の発想だ。防衛増税だけでなく、将来的には金融所得課税の強化なども進めるのではないか」と指摘する。 負担増に直結する兆しもある。前出の大綱では、16~18歳の高校生年代の子を持つ親世帯の扶養控除の縮小を見送ったが、児童手当拡充の〝代償〟として縮小を視野に入れている。 防衛力強化による「増税」も、所得税の増税時期は先送りされたが、法人・たばこ税は2026年4月から増税が決まっている。社会保険料の負担なども増えていくことが予想される。