投資トラブルで地獄を見た「TKO・木本武宏」今だから語る真相 発覚後に頭をよぎった「最悪の選択」
■みんなから「死ぬなよ」という連絡 ――気持ちがすごいこもったタイトルですね。だまされたと気づいたとき、気分が落ち込んだり、沈んだりというのは大丈夫でしたか? もし自分が一人で全資産を持っていかれ、ひとり暮らしで家族もいなくてという感じだったら、死んだほうが楽かなって考えたかもしれないです。でも、今回はまず仲間も一緒に被害に遭っているし、家族は不安になっているという中で、どう考えてもそんな発想にはならなくて。どう乗り越えようかということばかり考えていたんです。 ところが、毎日いろいろな人がありがたいことに心配して連絡をくれました。事が事だからみんな「死ぬなよ」とか「最悪の選択するなよ」みたいな連絡をくれる。相手は僕一人に送っているんですが、受け手(木本さん)はそれを一日に何通ももらうわけです。そこに死ぬなよ、死ぬなよ、死ぬなよ、死ぬなよ、死ぬなよ。翌日も死ぬなよ、死ぬなよ、死ぬなよ、死ぬなよっていっぱい言われるんですよ。そうすると、逆に人間って死ななあかんのかなって思ってしまうんです。 ――そういうとき、どうやって前を向いたのですか? こういう方に支えてもらったとか、ご自身の中でこう捉えたら楽になったとか、同じように詐欺に遭って自分を責めてしまっている人が少しでも楽になる方法があるといいなと。 (一時期は)家のテーブルはぐちゃぐちゃになってて、テレビのリモコンを取るときに、かき分けて取るとかそんな状態になっていたので、さすがにもうあかんなと。せめてリモコンぐらいはすぐ取れるようにしようと思って、2つあるリモコンを真ん中に持ってきて、まっすぐに並べて置いたんです。ぐちゃぐちゃの(テーブル)の中に2つだけそろっているものができた瞬間に、その周りも気持ち悪いなと思って、この紙を捨てておこうとか、ちょっとだけ周りもきれいにしようという気持ちがわいてきたんです。
■しんどくても「最初の一歩」だけやってみる そして翌日、パッとテーブルを見たら、その周りもちょっとだけ整理する気力が少しずつわいてきて。気が付いたら部屋の掃除をしだしていました。今度は自分の体もきれいにしようと思って、シャワーも浴びるようになって。今思い返したら、リモコンをそろえたことから、気持ちがもう一回シャンとしだしたという記憶があって。 そうなれたら今度、たまたま千原ジュニアさんが連絡をくださって。「外に出たほうがええんちゃうか」と言ってご飯に連れて行ってくれて。恐る恐る久々に外に出て、こんな俺にも普通に話してくれるんだと思って。俺、こんなんやったなって取り戻して。そこからすごく生活が変わっていったというか。 結局、最悪なことが起こったら全てがしんどくなるから、細いほう、狭いほうへ精神的に行きがちですが、そっちに行ってしまうと、事が動くきっかけは絶対にやってこないから。しんどくても何か最初の一歩だけ、ちょっと「よいしょ」と思うことをやってみて、人としゃべるというのが全てかなと思っています。 ――人生観は変わりましたか? 枠の中だけで仕事をしていたなと気づくきっかけになりました。プロダクションに入り、ライブからはじめ、テレビに呼んでもらうようになり、テレビで忙しくなった。少し知名度も上がった。呼んでもらえるところに行く。とりあえず常に待ちの姿勢。いわゆる芸能界の仕事のいただき方しかしていなかったのは違うと思うようになりました。いつの間にかそんな錯覚を得ているうちに、それが当たり前になっているうちに、一歩外に出たら、それじゃ仕事が少なくなっていくだけだという感覚をつかめたというか。仕事って自分から作りにいかなあかんなって。