「どちらのナマハゲさんですか」 大みそかの夜 親子で「うおーっ」
【秋田】「うおーっ」。昨年の大みそか夜の男鹿市。厄を払い、福をもたらすとされる伝統のナマハゲ行事が繰り広げられ、迫るようなうなり声が所々で響いた。船川港に近い芦沢地区では、親子ナマハゲが一緒に家々を回った。 【写真】親子でナマハゲを担う武田泰明さん(左)と息子の侑馬さん=2024年12月31日午後5時57分、男鹿市船川港船川の芦沢町内会館、隈部康弘撮影 家の玄関に迎えられた2匹のナマハゲ。「どちらのナマハゲさんですか」と、気さくなお年寄りに尋ねられた。「どちらって、ナマハゲに聞かないでくれ。親子でやってんだ」と、父親ナマハゲが楽しげに答えた。 介護施設で働く武田泰明さん(45)はナマハゲ歴約25年になる。息子の侑馬さん(20)は男鹿市役所に勤め、ナマハゲに仲間入りして2年目だ。 芦沢地区では昨年、ナマハゲ10匹が3組に分かれたが、2人は初めて同じ組になった。「心強いです」と侑馬さん。泰明さんも「担い手になってくれて、うれしいよ」。 侑馬さんは子どものころ、家に来るナマハゲに「びびって仕方なかった」(泰明さん)。それが父だと知っていても恐ろしかった。 ただ、関心はあった。高校生になって、ナマハゲを入れていいかを事前に家の人に確かめる「先立(さきだち)」を務めるうちに、「怖さの中にも優しさを感じるようになった」という。 荒々しくてもナマハゲは鬼ではなく神。泣かせてしまっても地域の子の成長を願ってのことだし、お年寄りには「まめでたが(元気だったか)?」と寄り添う。最後には「山から見ているからな」と言い残して、みんなを気にかけている。 「誰に習うわけじゃない。自然にナマハゲの心を(侑馬さんが)理解してくれた」。泰明さんがまたうなずいた。 男鹿市によると、ナマハゲがユネスコの無形文化遺産に登録された2018年、92町内がナマハゲ行事を行った。20年にはコロナ禍で35に急減。最近は持ち直したが、担い手不足もあり、24年末に実施予定としたのは68町内だった。(隈部康弘)
朝日新聞社