なぜティモンディ高岸は独立リーグデビュー戦で2回3失点のプロ洗礼を受けたのか…出過ぎたアドレナリンと多忙な芸能活動の影響
しかし、6番・中村和希のカウントも3-0となる。今シーズン最多の5021人が詰めかけたスタンドから、高岸を励ますように起こった小さな拍手はストライクが入ると大きく広がり、センターフライに打ち取った後は万雷のそれに変わった。 マウンドから戻ってきたベンチ前で「何とか帰ってきました!」と叫んだ高岸は、片山への一球が140kmを計測していたと、試合後の囲み取材で初めて知らされた。 「数字や結果よりも、自分が気持ちを込めて投げられたかどうかだけを考えていたので、球速は一度も見ませんでした。それでも、見ている方々を応援したいと言っていたはずなのに、またもや応援されちゃったな、という思いが強いですね」 成瀬が見抜いたように、やはり気負いがあった。加えて、18.44mの距離をはさんで対峙する埼玉のバッターたちから野球の醍醐味をも感じていた。 「スイングひとつに意図を感じるんですよ。どのようにスイングして、どのようなバッターになりたい、というのがガンガン伝わってきて。それに応える意味で僕としても楽しくなってきたし、やっぱり野球っていいなと思いました」 野球への愛、と言ってもいい思いは2回に異例の形で弾けてしまう。 先頭の7番・青木玲磨へ投じた初球。136kmのストレートを完璧に弾き返され、左中間スタンドに叩き込まれた直後から笑顔を浮かべ始めた高岸は、そのままホームベースへ近づき、一周してきた青木へ「ナイスホームラン!」と声をかけた。 ティモンディの公式YouTubeチャンネルで生配信された一戦で特に反響を呼び、なかには批判の声も招いた相手打者への祝福は、無意識のうちに出たものだった。 「本当に素晴らしかったので。甘い球ではあったんですけど、それをしっかり打ち返したのはお見事だと僕には心の底から思えた。いいプレーを通じて野球の素晴らしさであるとか選手の魅力というのが出れば、それは僕にとって最高の場面なので」 熱い思いとは対照的に、高岸のピッチングはさらに荒れていく。 一死後に9番・石森亨を歩かせた。金子の2球目に仕掛けられた盗塁こそ叺田が刺したが、金子、樋口にも連続四球を与えてしまう。片山には1-1からの3球目、135kmのストレートを右前へ弾き返されるタイムリーでリベンジされた。 フェルナンドの4球目に盗塁を許し、二死二、三塁と広がったピンチは138kmのストレートでセンターフライに打ち取って何とか防いだ。しかし、初回の23球に続いて29球を投げ、トータルで52球に達した2回をもってお役御免を告げられた。 注目の初登板を被安打3、ほとんどが高目に外れた末に与えた5四球、3失点で終えた高岸とベンチで交わした会話の一端を、成瀬は次のように明かしてくれた。 「投げるスタミナであるとか、走るスタミナがまだまだ足りないと本人は言っていた。仕事もあるなかで野球をやっていく二刀流はすごく大変な部分もあると思うので、そこに対しては決してやり過ぎず、毎日少しずつ、彼にできることをしっかりやっていくしかないと伝えました。すごく真面目な性格で、けがをすることだけが怖いので」