富田の眠れる才能・保坂斡希がついに高校全国デビューへ【高校バスケ】
『Softbank ウインターカップ2024』の開幕まであと6日。開幕直前ということで、大会特集号の「月刊バスケットボール2025年2月号」に収まりきらなかった注目選手やトピックスを紹介していく。 本日紹介するのはチームとして3年ぶり、そして個人としては初のウインターカップ進出を果たした富田のエース、保坂斡希だ。
最初の最後で高校全国デビュー、知られざる才能を爆発させるか
いくら能力があっても、日の目を見ない才能はこの世に五万と存在する。岐阜県の第3代表としてウインターカップに臨む富田のエース保坂斡希もその一人だ。 中学時代は世代でも屈指の選手として評価を集めていた。四日市メリノール学院中でスコアラーとしてチームを率い、3年生だった2022年のJr.ウインターカップでは、3回戦で奥田クラブを相手に38得点。奥田のエース高田将吾(同試合36得点/現福岡大附大濠)と壮絶な点の取り合いを演じた。試合には敗れたものの、保坂のプレーに明るい未来を予感した者は多かった。 加えて、進学先に選んだ富田は2021年度に創部17年目にして初の全国大会出場を果たした、勢いのあるチームだった。 兄である保坂晃毅(神奈川大/飛龍高卒)の勧めで富田の練習に参加し、「中学3年生のJr.ウインターカップの前くらいに兄から『富田というチームがいいぞ』と勧められました。実際に練習に参加してみると、みんなが声を出して全力でプレーしていて、チームの雰囲気がすごく印象的でした。当時は進路に迷っていたのですが、練習に参加してここにしようと思いました」と進学を決めた。同時に、当時の絶対的エース高橋快成(岐阜スゥープス)に憧れた面もあると、保坂は語っていた。 しかし、高校入学後は試練に直面する。美濃加茂、高山西という東海地区でも屈指の強豪が集まる岐阜県内において、あと一歩全国に届かない日々が続いたのだ。 1年時のインターハイ予選では、決勝リーグで2勝を挙げながらも、58-71で美濃加茂に敗れて準優勝。同年のウインターカップ予選でも決勝まで進んだものの、大接戦(65-68)の末にまたしても美濃加茂に敗れた。以降も2年時は夏に美濃加茂、冬に高山西に敗れて全国への望みを絶たれ、3年生になった今年もインターハイ予選で再び美濃加茂に全国への道を阻まれた。 そんな中、最後の冬にチャンスが訪れる。美濃加茂が東海大会で優勝し、インターハイ本戦でも決勝に進出したことで、岐阜県にウインターカップ出場枠が計3枠与えられることになり、その枠を掴んだのだ。 はたして全国への挑戦権を手に入れた保坂。彼の魅力は187cmの長身で司令塔をこなすほどの器用さとダイナミックさ。ピック&ロールからの状況判断にも優れ、ロールしたビッグマンへのパスはもちろん、プルアップの3Pシュートも打てる。また、オープンコートでは鋭いドライブで相手ディフェンスに割って入り、簡単にレイアップまで行ってしまう。しなやかさの中に力強さもあるそのプレーは、宇都宮ブレックスの小川敦也を彷彿させる。 本人も高校1年時のインタビューで、「今一番得意なプレーは1対1と3Pシュートで、逆に伸ばしていきたいのはパスの部分です。目標にしている小川敦也選手のように将来的にはガードをやっていきたいと思っているので、それもあって仲間を見付ける視野やアシストというのは伸ばしていきたいと思っています。高校に入学してからは、日々の練習で集中力が切れないように意識しています」と話していた。 あれから2年。なかなか日の目を浴びることはなかったが、それでも腐らずに自身とチームに向き合い続けた日々。露出が少ないこともあってか、アンダーカテゴリーの日本代表などには選出されていないが、彼の能力はそこに選出された選手たちと何ら遜色ないレベルと言っていいだろう。 高校最後の冬にようやく全国デビューを飾る眠れる才能。ウインターカップ前に保坂斡希という名をぜひ覚えておいてもらいたい。
取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)