Coltが西日本でネットワークを拡張、富士通の光送受信機「1FINITY」を採用
Coltテクノロジーサービス(以下、Colt)は11月28日、グローバル事業戦略およびアジア市場戦略について発表した。 【画像】Coltテクノロジーサービスの大江克哉氏(代表取締役兼アジア営業担当バイス・プレジデント) Coltは、2023年11月に米Lumen TechnologiesのEMEA事業を買収し、欧州で最大の通信事業者となった。「Coltは元々金融系サービスの知見が高いが、そこにLumenのエンタープライズや政府系ビジネスの知見が加わった」と英Coltテクノロジーサービスの水谷安孝氏(アジア太平洋地域社長)は言う。さらにこの買収は、欧州と北米間を結ぶ海底ケーブルを自前で持つことも意味している。 APACのエリアでは、これまで抜けていた豪州において、シドニーのメトロネットワーク拡張も発表。20以上のデータセンターおよび250以上の商用ビルを接続した。2024年12月から販売を開始し、デリバリーは2025年3月を予定している。 Coltは、東南アジア6カ国(フィリピン、台湾、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア)のカバレッジ拡大を6月に発表している。今回の豪州の拡張により、APACの全域でColtの自社ネットワークを提供できる状態になった。 ■ 富士通の低消費電力光送受信機を採用 国内においては、西日本のカバレッジ拡張に着手している。「西日本はSIパートナーの要望が非常に高く、岡山、広島、福岡と高速ファイバーを延ばす計画」とColtテクノロジーサービス株式会社の大江克哉氏(代表取締役兼アジア営業担当バイス・プレジデント)は言う。2025年後半には、岡山市内のデータセンターに専用線を接続する予定で、その後、広島市内、福岡市内へと順次拡張していく。 また、このネットワークでは、富士通のトランスポートブレード「1FINITY T900」を採用することも発表された。「1FINITY T900」は、光1波長あたり800Gbps(1.2Tbpsまで拡張可能)という大容量であることはもちろん、世界初の水冷技術を適用したネットワーク機器であることも特徴。 具体的には、コールドプレートで発熱モジュールを挟んで冷やし、コールドプレートを冷やしている冷却液のラジエーターをファンで冷やす液冷方式。発熱モジュールに空気を当てて冷やすのに比べて、ファンの回転数を低くできるため、消費電力が格段に小さい。機器のサイズもコンパクト(2RU)で、音も静か。また、冷却液は機器内のみで循環するため、新たなファシリティ工事は不要だ。 Coltでは、2019年に「サステナビリティ・バイ・デザイン」戦略を展開し、気候変動対策にも積極的に取り組んでいる。「1FINITY T900」は、消費電力削減の意味でも価値が高い。もちろん、日本の機器という信頼感もある。 「国産技術による高い性能、国内製造による高い品質、また、グローバルベンダーとしてのサポート体制によって、Coltの安心安全なネットワークサービスの運用を支えていきたい」と、富士通の島田裕二氏(システムプラットフォームBG ネットワークビジネスフロント本部 マーケティング統括部長)は言う。 CO2排出削減には、古い機器を低消費電力の新しい機器に入れ替えるのが最も効果的なので、今後「1FINITY T900」がさまざまな地域のColtネットワークで使われることを期待したい。 ■ サポート体制の強化 自社ネットワークを真にグローバルに展開した企業として、次に必要となるのはワンストップでサポートする体制だ。多くの海外拠点を持つ企業にとって、レギュレーションやビジネス習慣の異なる多数の国で通信事業者とやり取りをするのは負担が大きい。もちろん、言語の壁もある。 そこでColtでは、一括で調達やサポートを受け付けるスペシャリストチームを立ち上げた。日本を含むAPACに本社を置く企業が、欧州・北米に拠点を置いた場合の問い合わせ先は「グローバルセールススペシャリスト」が受け、ソリューションアーキテクトと密連携して要望に応える。逆に、APACに進出する欧州・北米の企業に対しては、「APACセールススペシャリスト」がサポートする。 また、日本独自のビジネス習慣として、エンタープライズのITインフラは自社ではなくSIerが構築するケースが圧倒的に多い。そこで、「システムインテグレータ成長モデル」という戦略を策定している。 西日本のネットワーク拡張も、この地域にデータセンターを持つSIerからの要望に応えた形で、各社データセンターへの直接のつなぎ込みを計画している。さらに、日本ではオペレーションやエンジニアリング、マネジメントなどにおいて、欧米とは違った高い品質を求める傾向にある。これをしっかり英国本社の経営層に伝え、44項目で強化に取り組むという。 ■ 今後の展望 ネットワーク拡張の他には、「Colt On Demand」として4年ほど提供しているNaaSのサービスをさらに拡張する計画だ。「ネットワークをクラウドサービスのように使える」ことを目指していて、Webポータルから契約、帯域変更やルート変更、機能追加などができるようにし、従量課金で利用できるようにする。 さらに、将来的なイノベーションに向けて、英ColtはRIVADA SPACE NETWORKSとパートナーシップを結んだ。RIVADAは、600機程度の低軌道衛星を使った衛星ブロードバンドサービスを構想している企業で、2025年の打ち上げを予定している。実現すれば、地上の光ファイバーよりも低遅延のグローバルネットワークが提供できると期待されている。
クラウド Watch,柏木 恵子