「走って&歩いて」逃げる、渓流の魚たち!? テンカラ初級ライター赤っ恥「デビュー体験」
■魚が走る! 大漁の予感! は間違いだった
テンカラ釣りは、魚のいそうなポイントを釣りながら川の上流へと移動していくのが基本のスタイルだ。川の上流へ移動しながら釣りをしていると、魚がピューッと泳いで遠ざかっていく姿を確認できた。「これは釣れそうだ!」と心躍る出来事だったが、さっぱり釣れなかった。 こんなにたくさん魚がいるのに、なぜ釣れないのか? その時は分からなかったが、渓流魚は釣り人(筆者)の存在に気付いて逃げていく「逃走中」の姿だった。 魚が勢いよく逃げていく様を釣り人は「魚が走る」と表現するが、人の気配に気づき、危険を察知した魚は、高い確率で釣ることができない。 これはテンカラ釣りに限ったことではないが、渓流での釣りは毛バリもエサも、ポイントに投げる前から魚との駆け引きが始まっているのだ。いかに気配を消し、物音を立てず、気付かれずにアプローチできるかが釣果をあげるコツだと実感している。こうした渓流魚との駆け引きがテンカラ釣りの面白いところだ。
■初めてのラッキーホームラン!
テンカラ釣りを始めた頃はアタリ(魚が毛バリをくわえること)が分からず、いつの間にか魚が毛バリに食いついていたことがある。 テンカラで釣れた最初の1匹は、釣れたことに全く気づかずに竿を振り上げたら小さなイワナがポーンと水面から飛び出てきた。まるで適当に振ったバットにボールが当たってホームランになったような、そんな気分だった。 毛バリを投げ、水面、水面直下、水面下を流し、毛バリをコントロールしながら魚を誘うのだが、山岳渓流は木々が覆い被さっていて薄暗い場所が多いことに加え、水面は流れが複雑で波や白泡などで水中の様子や水面直下の毛バリは見えにくい。視認性の高いラインを使い、ラインの位置や動きで魚の反応を予測しながら釣ることで釣果を上げやすくなったが、そのコツが分かるまでには慣れが必要だ。
■記念撮影中に逃走! イワナは歩ける!?
何度かテンカラ釣りに出かける中でようやくいいサイズのイワナを釣ることができ、記念撮影の準備をしていた時のことだ。水際の濡れた石の上で横たわっていたイワナが起き上がり、川に向かって体をくねらせて前進、川へと帰っていった。 釣り上げた魚をすくう「タモ(網)」を持っていなかったため、河岸の岩で囲っていたのだが、イワナは難なく越えていってしまった。 タモを携行するようになってから、釣り上げた後にバラすこともなくなった。記念撮影の時もイワナにはタモに入れた状態で水の中で待機してもらい、リリースする時も元気いっぱいだ。