もしテスラが「トヨタを買収したい」と言い出したら、日本政府はどうすればいいのか…?
日本製鉄とUSスチール
日本製鉄によるUSスチール買収についてアメリカのバイデン大統領は、公式に反対の意見を表明しています。 【写真】いま全米が注目…トランプの「美人すぎる側近」の正体! この買収、もともとはUSスチールの方から言い出したもので、日本製鉄の技術力を移管することで競争力が高まり業績が回復することを狙ったものでした。 この買収がうまくいかなかった場合は、USスチールは製鉄所の閉鎖と従業員のリストラを計画しています。買収が成立したほうが当事者にとっては良い結果になるのですが、それを政治が反対するのには理由があります。 USスチールのライバル企業がペンシルバニア州にあって、この企業がUSスチールの競争力が向上すると業績が悪化することを懸念しているのです。そしてペンシルバニア州が大統領選挙の激戦州であったことから民主党・共和党両党ともUSスチールの買収に反対していたのです。USスチールの買収に反対したのはトランプ大統領の方が先でした。 さて、読者の皆さんはこのアメリカ政府による買収阻止に賛成ですか? それとも反対ですか?
日本の「買収提案」が意味すること
日本のメディアの報道のトーンは、買収阻止を懸念するものが多いように感じます。フェアなビジネス慣行を重視するのであれば、日本製鉄の買収は認められるべきだという意見が多数派に感じられるのです。 日本政府はここ十年ほどの間に企業買収に関する方針を大きく変えてきました。 海外からの投資を促進することが目的です。日本の大企業に対してはまず株式の持ち合いを解消し、つぎにガバナンスの改革を進めました。海外の投資家の意見が経営に反映されやすくなる土壌を整えてきたのです。 そして近年は日本企業の買収についてもフェアである方向に方針が修正されています。象徴的な話として海外からの投資のガイドラインでは「敵対的買収」という言葉が使われないようになりました。 これに関連する具体例が、カナダのアリマンタシュオン・クシュタール社によるセブン&アイの買収提案です。 以前であれば敵対的買収提案とでも呼ぶべきものではありますが、新しいガイドラインの下、セブン&アイでは経営陣が頭から買収提案を否定するのではなく、独立した社外取締役のグループによってこの提案を検討するようなプロセスが実行されています。