突如流行した「韓国の伝統菓子」。世界中から“熱い視線が注がれた”理由
中国の「タンフル」は日本でも注目される存在に
次に、「タンフル」の事例も紹介したい。もともとタンフルは、旬のフルーツを飴でコーティングした「糖葫蘆(タンフールー)」という中国の伝統的なスイーツである。 これが韓国に持ち込まれた際、飴の部分をさらに薄くしてイチゴやみかん、シャインマスカットなどと一緒に提供するスタイルにアレンジされた。飴のパリパリとした食感と冷たい果物のジューシーさ、鮮やかで愛らしいヴィジュアルが支持され、たちまち注目が集まるように。 ポイントは、飴を薄くすることで聴覚に訴求したという点だ。見た目や味だけでなく、食べる時のパリパリとした咀嚼音まで楽しめると、YouTubeでASMR動画が多数アップされている。これがSNSで話題を呼び、特に小学生から20代の若者に絶大な人気が出た。 韓国で流行ったスイーツは、時間差で東京の新大久保などからブームに火が付く傾向がある。それもあってか、2023年には日本でも注目される存在だったのは記憶に新しいところだ。
「和のフレーバー」で独創的で新感覚なスイーツに
アジアばかりではない。北米や欧州、オセアニアでも伝統モダナイズのスイーツトレンドは見られる。 オーストラリアには「Lamington(ラミントン)」という、キューブ型のスポンジ生地をチョコレートコーティングし、ココナッツをまぶした伝統菓子がある。 このラミントンも現代風に進化して人気になっているが、そのアレンジのヒントとなっているのが、和のフレーバーである。発端になったのは、シドニーのポップアップストアからスタートした「Tokyo Lamington」というスイーツ店だ。柚子、黒胡麻、きなこ、抹茶などといった和を感じさせるフレーバーを用いて、ラミントンを独創的で新感覚なスイーツに仕上げた。この斬新なテイストが現地で話題となり、勢いそのままにメルボルンに2号店を出店した。 その他、キットカットや紅茶のLipton、ジンなどのアルコールブランド、スキンケアのHADA LABOといった異業種とのコラボ商品も頻繁に発表している。 また、以前は地産地消のコンセプトを取り入れ、オーストラリアの先住民族アボリジナルの伝統的な食文化であるブッシュタッカーのフルーツを使用した商品を発表したこともある。 オーストラリアの伝統菓子に、和のフレーバーといういわば自国の外からヒントを得て新しい商品を作る。それに加え、先住民族、つまり自国の内からも要素を取り入れて現代風に商品作りをしているのも、広い意味での伝統モダナイズと言える。