「動画止めろ!」"立ちんぼ"と盗撮男のバトル急増…SNSに拡散で"金稼ぎ"も「刑罰のリスクは少ない」潜む問題点
■撮影動画の“削除義務”はあるのか
まず“盗撮”の定義について。 「一般的には本人の了承なく撮影されたらすべて“盗撮”という認識かもしれませんが、法的に刑事事件として処罰される可能性があるのは、原則として『性器や臀部、胸部などの性的な体の部位』や『性的な部位を隠すために着用している下着』を同意なく撮影する行為を指します」(勝間田弁護士=以下同) つまり勝間田弁護士によれば、明らかな痴漢撮影行為を除き、「衣服を着た状態で、その下着を撮影する場合でなければ、たとえ無断であっても法的に処罰される『盗撮』には当たらない」のだという。 「公道に立っている人の撮影を刑事的に罰する法律はなく、原則として『犯罪』にはなりません。公道は公共の場所であり、自分の姿が他人に見られることが前提となるため、ある程度の撮影は許容されるという考えによるものです。 ただし撮影の目的やその後の利用方法など、状況によっては肖像権侵害などの問題が生じる可能性があり、その場合民事訴訟(損害賠償請求)の対象となります。顔にボカシやモザイクがかけられることがあるのは、損害賠償請求を避けるためです。ただ、自治体が定める迷惑防止条例に違反する場合もあるので、該当すれば刑罰が科されます」 では実際に公道で立っているところを撮影され、不快に思った場合どうしたらいいのか。 「警察では撮影者を注意することしかできないのが現状です。撮影行為の抑止力にはなるかもしれませんが、強引に警察に突き出すと、逆に訴えられる可能性もあるでしょう。相手の連絡先などを確認し、弁護士に相談、交渉をすることになります」 一方、撮影者側に立った場合、とにかく撮影動画を「消して」と要求されたら、従う義務はあるのか。あるいは、従わなかったらどうなるのか。 「法律上、撮影された人には肖像権があり、動画を削除するよう要求できる権利はあります。したがって、無断で撮影した人にその動画を削除する義務はあります。ただ、従わなかった場合に刑罰が科されるということは原則としてなく、損害賠償(慰謝料)の請求ができる、つまりあくまで民事上での解決を図ることになります」 たとえ損害賠償を請求しようとも……この“SNS晒し”には大きな問題点が潜む。 「削除する義務があるといっても、アップロードした者が刑罰を科されるリスクは高くないのが現状です。他方で、いったんそのような動画がネットに出回ってしまうと、その動画自体を削除できたとしても、転載されるなどして半永久的に出回ってしまうと言っていいでしょう。“盗撮”する側とされた側の受けるダメージのバランスは、非常に歪(いびつ)なケースがあるのが現状です」 誰でも“加害者”にも“被害者”にもなりうるかもしれない。
ピンズバNEWS編集部