令和の「王道」に注目 若手選手の台頭で全日本プロレスが活性化
【柴田惣一のプロレス現在過去未来】
「王道」全日本プロレスの勢いが増してきた。 新日本プロレスと並ぶ歴史と伝統を誇る全日本。新日本、ノアとともに3大メジャーと言われてきたが、DDTや大日本プロレスなど後発団体に押され気味だった。 【動画】「第11回 王道トーナメント」を制覇した綾部蓮がリング上で堂々アピール 親会社のサポートを受ける新日本やノアと違って、独自の資金力で団体運営を続けるのは厳しい限りだが、今年になってから若手選手の台頭により、人気が徐々に復活。ファンが詰めかける会場には熱気がこもってきた。 「王道トーナメント」の準決勝、決勝が争われた9・22東京・後楽園ホール大会は札止め(1473人)となっている。 ベスト4には現三冠王者・青柳優馬も前三冠王者・安齊勇馬も勝ち残れなかった。いわば飛車角落ちのフィナーレとなったのに、本田竜輝VS宮原健斗、綾部蓮VS斉藤レイの準決勝2試合から会場は熱気むんむん。綾部と本田の優勝戦は拍手と歓声が鳴りやまなかった。 とにかく各選手の個性が際立っている。優勝した綾部は2メートル戦士。大型選手が揃う全日本のなかでも群を抜いている。高角度のドラゴンスープレックスホールドには度肝を抜かれた。しかも見栄えだけではない。その丹力も超大型だった。落ち着き払ったマイクアピールもスケールが違った。 優勝トロフィーを手に三冠王者・青柳に挑戦を迫ったが、どちらがチャンピオンかと思わせた。まずは上から目線で見下してきた青柳に「偉そうにモノ言っているんじゃないぞ」とピシャリ。ビビった青柳は三冠ベルトを抱え込みながら「このおろかな私めが持つ三冠のベルトに挑戦していただけないでしょうか」と言い直した。王者を完全に気押した綾部は「よく言えました」と青柳の頭をグリグリなで回して見せた。 超大型戦士らしく鷹揚とした空気感を醸し出している綾部だが、とんでもない。肝の据わった超大物なのだ。 2年連続の準優勝に終わった本田は「こんな悔しい思いはもうしたくない」と感情を抑えきれずに泣き出してしまった。実は素顔はとんでもなく明るい。普段はニコニコと底抜けの笑みを浮かべている。 「小さいころから、こうです。レスリングの先輩には『ニヤニヤするな』とよく怒られましたが、生まれつきだから仕方ないですよね」と、またまたニッコリ。その全身は健康優良児というか、やんちゃなガキ大将というか、元気のオーラに包み込まれている。こちらまでパワーがみなぎって来るから大したものだ。 ここにきて勝利の「ホンダンス」を披露するようになった。入場テーマ曲に乗って踊りまくる。「アドリブです。曲も自分のだったり、対戦相手のだったり、臨機応変です」と笑う。決して格好いいわけではないが、本田本人はいたって真面目そのもの。踊っている本人が楽しむことで、見ている人も楽しめる。実際、ついつい頬が緩んでしまうホンダンスである。 明るいといえば宮原選手会長だが、本田はその上を行く「超・陽性」。人間、かわいげが大事だが、本田は何とも言えないかわいげで人気赤丸急上昇中である。 今年3月に史上最年少で三冠王者に君臨した安齊は、正真正銘のイケメン。下北沢や渋谷をホームタウンとするおしゃれな令和の若者で、若い世代のファンを中心に支持を集めている。 ジュンとレイの斉藤兄弟は写真集を出すなど全国区。三冠王者・青柳は独特のアピールで好評を得ている。宮原選手会長は「エース」の称号が似合う。 若手の成長にいったんは引いた諏訪魔もまだまだ「体を張る」と宣言。耳性めまいによる欠場からの復帰も果たし「バカの時代」として明るく楽しいプロレスを体現。バカ戦士の増殖など、かつてのマシン軍団のようで今後の展開が気になる。実力者・芦野祥太郎も見逃せない。 一時期は低迷が心配された全日本だが、底力を発揮。とにかくデカい大型選手が揃うリングは大迫力。まさにプロレスラーという体格の男たちの白熱のバトルは非日常の異空間。大きさは武器でもあり魅力でもある。 ここにきて若手がトップ戦線に踊り出し、全日本が誇るヘビー級軍団は充実。多士済々が揃ったジュニア軍団も相まって、王道のリングが再び輝き出した。
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