湾岸タワマンは将来「負の遺産」確定?麻布エリアに「永遠に勝てない」悲しすぎる理由
「築100年」は本当に充分なのか
その一方で諸外国に目を向けると、築100年以上の建物に現在も人が住むことは決して珍しくない。 たとえばパリでは、今でもナポレオン時代に建設されたアパルトマンが健在で、集合住宅として機能している。パリのアパルトマンは石造もしくは煉瓦造。鉄筋は使われていない。錆びないから何百年でも存在し続ける。ローマにはカエサルの時代から続く石造の集合住宅に、今でも人が住んでいるそうだ。 しかし上述したように、日本のRCマンションのほとんどは200年後にも人が住むのは現状難しい。 もちろんこうした違いは、それぞれの国が置かれている地理的な状況に影響されるため、一概に比較することはできない。 日本は世界に冠たる地震国であり、石造や煉瓦造の高層住宅は現実的ではない。現に、1923年の関東大震災では東京・浅草の遊園地にあった12階建ての「凌雲閣」が倒壊。およそ10人の死者が出た。この建物は煉瓦造であったという。 これ以降、日本では煉瓦造の高層建築は事実上「ご法度」になった。もちろん、現行の建築基準法でも認められていない。 そのため、今の日本で高層建築を作る場合は、事実上RCの一択とならざるを得ないという側面があるのだ。ただおそらく、日本の法的な建築基準は世界最高水準の耐震性を定めており、その分安全性は非常に高い。
タワマン住民を待ち受ける「終わり」とは
こうした安全性との裏返しで、RCは建物が寿命を迎えた後の「始末」、つまり解体に手間がかかることがある。 特に、高層建築物であるタワマンの場合、建築的に寿命を迎えて解体する場合には、通常タイプのマンションに比べて恐ろしく高額の費用も発生し得ることが予想される。 今のところ、日本のタワマンが取り壊されたケースは、筆者が認識する限り九州・福岡に1件あるだけだ。このケースでいったいどれほどの費用が掛かったのかは不明だ。 ただしこのタワマンのケースは異例で、2015年に発覚した耐震偽装ゴム事件の対象物件だった故に、築20年程度で取り壊されている。さらに言えば、このタワマンは賃貸であったので、いわゆる「ワンオーナー」。所有者が「ひとりもしくは1社」であるので、オーナーの意思決定で解体が可能になる。 ところが、分譲型のタワマンの場合には所有者が数百人以上であることが普通だ。今の日本の法制上では、そのほぼ全員が解体に同意し、かつ費用分担に応じなければならない。現実的に考えれば、今の日本の区分所有法に従ってのタワマンの解体は、非常にハードルが高いと言えるだろう。 しかし、いくら遠い未来とはいえタワマンにも建物としての「終わり」はいつか必ず訪れてしまう。