プロに教えてもらう器使いの極意と御用達ショップ【料理人、濱守球維さん】
盛り付けのセンスが光る食のプロに、器使いの極意や御用達の器ショップを教えてもらう連載「あのひとの器ライフ」。第7回目は料理人の濱守球維さん。経年変化の違いを楽しんで使い込む木工作品や陶器が、食卓で大活躍するテーブルコーデをご紹介。『エル・グルメ』No.33号掲載。
‟「決まる大皿」を柱にして 作家ものをタフに使う”
前職はレコード会社勤務で、音楽とカルチャーにどっぷりの日々を長く過ごした。“自己投資” の対象といえば、一にレコード、二に洋服やアクセサリー。料理を仕事にするようになって、それが “器” に変わった。 「ある木工作家さんの個展がきっかけ。目に留まった一点を、清水の舞台から飛び降りる気持ちで買ったのですが、使うたびに気分が上がり、考えずとも、卓上の景色が決まる。器の大切さに気付いた瞬間でした」 そんな始まりの影響か、木工作品に思い入れが強い。何かとデリケートで扱いに気を遣う木地だが、細かいことは気にせずタフに使い込んでいるという。 「ケータリングにもガンガン持ち歩くし、揚げ物もじかに盛って洗剤でゴシゴシ洗う。みるみる見た目が変わるけれど、その変化もいとおしい。付き合いの長い作家さんは、おもしろがって見守ってくれています(笑)」 変化を楽しむのは、陶器も同じ。例えば、硫化銀彩の器は、使い込むほどに如実に風合いが増すのが気に入っている。さびたように “育った” 硫化銀彩に、あえてガラスの器を組み合わせ、ざらっとしたマット感とクリアな輝きのコントラストを作れば、それもまた卓上の景色に。 「盛り付けをこねくり回すのは好きじゃない。ざっと盛って美しければ、それが最高。そう考えたとき、器作家の力に助けられているな、と実感します」 大皿もまた「強い味方になる」と話す。言われてみれば、先の木地モノを筆頭に、濱守家には直径40cm級の大皿がわんさかある。大人数での食事の機会に限定せず、少量を盛り付けたり、小皿や豆皿と組み合わせて盛り込んだりと、日常的に使っているのだとか。目指すのは「不作為の作為」と、濱守さん。器の余白が、それをかなえてくれる。