NHK、「旧ジャニ」の紅白出場枠を2組で調整か 増枠目指す旧ジャニ側と交渉難航で「折り合いがつかない」の声も
上層部と現場に温度差
スタート社側にとって交渉の強みは2022年にNHKを退社した元同局理事・若泉久朗氏(62)を顧問に迎え入れていること。元制作局長でもある若泉氏は同局と「紅白」の仕組みを隅々まで知り尽くしている。 NHKの制作畑の職員によると、大半が報道畑出身者である同局上層部はガバナンスや視聴者全体の反応を優先するので2組の線を譲りたくない。一方で「紅白」を盛り上げたい制作現場は3、4組でもいいと考えるはずだという。 加えて、制作畑としては今後の番組づくりを考えると、スタート社との友好関係を築き上げたい。報道畑と違い、制作畑は視聴率を求められるのだ。若泉氏とスタート社側は同局上層部と制作現場の思惑の隙間を突き、3、4組の出場を実現させようとすると見られている。 同局上層部と制作現場の考え方に隔たりがある背景には根源的な理由がある。同局の現在の上層部に多い報道畑と制作畑には人事交流がないに等しく、別会社に近い。2022年4月入局組までは採用も別々で、今も報道希望者が制作に配属されることはまずない。 だから報道畑は「紅白」や芸能事務所に対する思い入れもほとんどない。1990年代前半、「紅白」廃止論を最初に口にし、制作畑を震え上がらせたのも報道畑の故・島桂次会長(当時)だった。信じられない人もいるだろうが、芸能人が不祥事を起こした際、制作畑が報道畑の取材に協力することもない。 ただし、報道と制作に距離があるのは一概に悪いこととは言えない。NHKのニュースは旧ジャニーズ勢による違法行為をニュースで特別扱いすることがなかった。民放が旧ジャニーズ勢の違法行為に目を瞑ったり、便宜を図ったりしていたのとは大違いだった。 さて、過去の旧ジャニーズ勢の「紅白」出場者数は2015年が過去最多の7組だった。近年の紅白の出場者数は紅組、白組それぞれ20組強だから、かなり多かった。 しかも白組のトリはまだ旧ジャニーズ事務所に所属していた近藤真彦(60)。16年ぶりの出場だった。ヒットがなかったこともあってか、歌ったのは旧作の「ギンギラギンにさりげなく」(1981年)。この年の近藤はデビュー35周年だった。 当時の「紅白」の責任者が制作局長時代の前出・若泉氏である。一方で故・メリー喜多川ジャニーズ事務所副社長の権力がピークに達していた時期でもあった。「紅白」の選考基準は「今年の活躍」「世論の支持」「番組の企画・演出」などと発表されているが、はたして近藤の出場とトリはどれに該当したのだろう。 2015年以降の旧ジャニーズ勢の「紅白」出場者数は2016年が6組、2017年から2019年が5組、2020年が6組、2021年が5組、2022年が6組。ずっと多かった。スタート社としては所属アーティストから不満が出ないようにするためにも早く同水準に戻したいに違いない。 もっとも、1997年から2008年に出場したジャニーズ勢は毎年2組に過ぎなかった。それが激増したのには理由がある。当時はジャニーズ事務所所属でSMAPの一員だった中居正広(52)が2006年から2009年まで司会を務め、SMAPも出演し、視聴率の下落傾向にブレーキをかけたからだ。 中居の後も2019年の嵐・櫻井翔(42)まで14年連続でジャニーズ勢の司会が続いた。2022年の司会は大泉洋(51)だったが、櫻井もなぜかスペシャルナビゲーターという耳慣れぬ立場で進行役に加わった。