記者クラブから姿を消した記者たち、自治体に危機感 「行政監視の意味も薄れている」 元テレビ記者が全国調査
●自治体職員も「行政監視」の弱体化を懸念
地域から記者がいなくなることは、その地域に関するニュースが減っていくことを意味する。 Shireruが今回実施したアンケートで注目すべきは、自治体の職員自体がこの傾向に危機感を抱いているという点だ。 記者クラブについて自治体が感じている課題を自由回答で尋ねた質問には、次のような「マスコミの弱体化」を挙げる回答が多かったという。 <小さな町の情報は取り上げられる頻度が少なくなったと感じる> <地方自治体のリリースに対応できないほど、報道機関自体が人手不足であると感じる> <報道機関の人員が不足している。広報担当者と記者が顔を合わせる機会が減り、お互い満足のいく報道にならないことが多いと感じる> <地方行政担当であっても、全国的・国政的な事案に係る取材活動の割合が多くなってきていると思われ、地元独自の事案の取材が少なく感じられる> さらには、役所の職員が広報する対象といった見方ではなく、一市民としての目線から報道機関の衰退を懸念する声も寄せられたという。 <一記者の(記者室での)滞在可能時間は減っており、「行政監視」という意味が薄れているように感じる>
●元テレビ記者の経験、行政取材の弱まりを実感
全国調査を実施したShireruの代表取締役、山田みかんさんは元々、テレビ局で記者をしていた。 自治体が広報する資料には地域の課題やその解決策が記載されていることが多く、山田さんは記者時代、そうしたプレスリリースを読むことが好きだったという。 しかし、現場の取材体制に余裕がなくなる一方で、会社としては視聴率を落とさないことが優先され、行政の取材に力を入れなくなっていることが気になっていた。 「多くの人に読まれるわけではないけど必要な情報というものがあり、その際たるものが行政の施策などの情報だと思っていましたが、記者としてそれらをつぶさに見られているのだろうかという疑問がありました」 そんな思いが強まり、2023年8月、自治体などの情報発信をサポートする会社「Shireru」を立ち上げた。