海外サッカーでも続いている差別との戦い
以降、オランダではいくつかのガイドラインが出来た。主催者クラブには、悪質なチャントを止める義務が生まれた。サポーターがこうしたチャントを歌い始めると、スタジアムには「悪質なチャントはクラブにとって不利益になります。チームのためにポジティブな応援をしましょう。さもなければ試合は中断、もしくは中止となります」というアナウンスが流れる。それでも静まらない場合、レフェリーは試合を中断し、冷却時間を作る事が出来る。試合再開後も騒ぎが収まらない場合、レフェリー、もしくは市長が試合を中止にする。 こうした歌を歌った者には9ヶ月から24ヶ月のスタジアム入場処分が課せられる。12ヶ月以上の処分を受けた者は450ユーロまでの罰金処分が付く。またクラブには最大3万5000ユーロの罰金と無観客試合1試合の可能性もある。サポーターの悪質なチャントは愛するクラブにも責任を負わせ、傷つける事にもなるのだ。 チャンピオンズリーグの放映を見ていると『NO TO RACISM』というUEFAのキャンペーンコマーシャルがハーフタイムに流れるが、さらに今、ヨーロッパのサッカー界は同性愛者、トランスジェンダーへの差別も無くそうと動き始めている。FAは2012年、プレミアリーグと新たな憲章を結び、「どのような背景にも関係なく、誰もがいかなるスポーツにも参加出来る事を我々は信じる。レズ、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの人々も同じである」と宣言した。オランダでは2013年8月、『ゲイプライド』という祭典にサッカー界を代表してファン・ハール、クライフェルト、ロナルド・デ・ブールが参加し、同性愛者への理解を求めた。 今もなお、差別のニュースはサッカー界から無くならない。それでもFAが『NO TOLERANCE(妥協は認めない)』という強い覚悟を掲げるように、ヨーロッパサッカー界は差別をなくすための知恵を絞っている。