名物文具店「ただっきゃ」復活するの? 名前は? 今夏98年の歴史に幕、記者が確かめた 南あわじ
今夏、地元住民に惜しまれつつ98年の歴史に幕を下ろした1軒の店が、兵庫県南あわじ市阿万下町にあった。多世代の憩いの場になっていた「川原文具店」、通称「ただっきゃ」。閉店時はセレモニーまで開かれたが、その後、神戸新聞淡路総局に「再開するらしい」と地元の市民から情報が寄せられた。どんな経緯で復活したのだろう。現地に足を運んでみた。(中村有沙) 【写真】復活初日は多くの親子連れでにぎわった ■地元有志が継承「多世代が気軽に集える場に」 木造民家を活用した店は阿万小学校のそばに立つ。開業を祝う花に隠れて「ただっきゃ2」という看板が見えた。 「地元の有志に手伝ってもらって、店を開けることにした」 再開を主導した元南あわじ市職員で農家の岸上敏之さん(69)=南あわじ市阿万上町=が教えてくれた。 ただっきゃには駄菓子なども並び、子どもも多く通った。岸上さんもその一人で、幼い頃から店に出入りした。年を重ねても文房具を買う際は店へ。それだけに、店主夫婦が体調の都合で閉店を決めた時の寂しさはひとしおだった。近隣住民からも「もったいない」と惜しむ声が上がった。 □ 店の周辺は昭和の中頃、多くの商店が並んだが、年々その数は減っていた。 「寂しいで終わらせたらあかん」。岸上さんと妻敬子さん(69)、だんじり唄継承団体でともに活動する出田光代さん(77)、北﨑かづ子さん(72)の4人は閉店後の9月初め、「ただっきゃ再興委員会」を立ち上げた。 再開の要望を以前の店主川原周二さん(77)に伝えると、快く店を貸してくれることになった。川原さんは「閉店を決めたが、誰かが続けてくれたらと思っていた。うれしい」と話す。 岸上さんたちは、川原さんに仕入れ方法などを教わりながら準備し10月5日、再開業を果たした。 店内には、これまで通り駄菓子や文具をそろえるほか、高齢者も入りやすいようコーヒーと抹茶を提供する喫茶コーナーを新設。手作り野菜の販売も始めた。 再開業初日は記念の餅つきなどを催した。店内のレジには多くの親子連れが列を作り、大盛況だった。 3人の子どもと訪れた苅部智香さん(36)=同市阿万塩屋町=は「昔からよく来ていたので、閉店は寂しかった。再開を聞いて待ち遠しかった」と喜んだ。 岸上さんは「子どもから高齢者までが気軽に集えるたまり場にしたい。地域の交流拠点のようになれば」と展望する。 当面は、再興委と地元有志で店番を回す。営業時間は、平日が午前7時半~午前8時半、午後2時~午後6時。土日祝日は午後の営業のみ。月曜定休。岸上さんTEL090・3629・4308