「バリバリにアクセルを踏んでいく」松本氏が明かすSPAC上場の知られざるメリット──コインチェック 米ナスダック上場【インタビュー】
SPAC上場の知られざるメリット
──SPAC上場は「空箱上場」と呼ばれ、揶揄する向きもあったが、今はIPOと比べてどのようなメリットがあり、どんなふうに評価されるべきだと考えるか。 松本氏:基本的には、SPACもIPOも上場という意味では同じ。SECに提出する開示文書や内部統制文書はすべて同じ。社内の体制を整えたり、開示文書を作る能力やチームが求められることも同じ。ただし、優れた人材がいるSPACと、上場後も一緒にやっていくことに合意できるならば、優秀な人材を得ることができるのは大きなメリットだ。 ──そのメリットはほとんど知られていない。 松本氏:今までに、こうしたことを行った会社はないと思う。我々も前例を見て行ったわけではないが、SPACに優れた人物がいたら、その後も一緒にやっていくのが良いのではないかと最初からそうイメージしていた。 ──長く資本市場に携わり、SPACの動向を見てきたなかで、そういう発想に至ったのか。 松本氏:SPACはそれほど見ていたわけではないが、資本市場はずっと見ていたし、規制当局の動きも見てきた。投資銀行とのやり取りもずっと行ってきて、いろいろな人物を見てきたので、この人物であれば一緒にやっていけると判断できたと思う。 ──SPAC上場に際して、暗号資産関連企業に特有の難しさ、ハードルはあったのか。 松本氏:先ほど言ったように、コインチェックのようなビジネスモデルについて、会計をどうすべきかというスタンダード、あるいはノーム(Norm:規範、基準)と良く言われるが、それが存在していなかった。会計のやり方をアメリカの監査法人やSECと決めていく必要があり、そこに非常に時間がかかった。 また、ビットコイン以外の暗号資産について、アメリカではコモディティ(商品)かセキュリティ(証券)かという論争がずっと続いていた。我々の場合は、日本で金融庁の監督のもと、日本の法律を遵守してビジネスを行っているので、その持ち株会社であるCCGはナスダックにスムーズに上場できるはずだったが、とはいえ、暗号資産にはいろいろな議論があったので、そこもしっかり説明して乗り越えていった。 長い時間がかかったが、ナスダックは世界一の市場で流動性が高く、注目度も高い。大変だったが、この先には価値あるものが存在していると考えている。 ──コインチェックグループの上場はアメリカの規制当局、あるいは市場・投資家からどのように期待されていると感じるか。 松本氏:規制当局からは特にないが、投資家からの期待は実感している。アメリカでも暗号資産関連企業では、コインベース以来、3年半ぶりの上場となる。また日本での暗号資産関連企業の上場にも、もしかしたら良い影響を与えるかもしれない。