「私は人工知能で作られた野々村真です」…世界と逆行する注目のプロジェクト「AI野々村」が日本を救うかもしれない「深い理由」
「人間・野々村真が壊れかけました」
野々村真(60)と言えば1986年の放送開始から38年間にわたって放送された長寿番組『世界ふしぎ発見!』のレギュラーとして知られるタレント。その甲斐あって、介護施設の利用者からの認知度は抜群だ。 「実際に野々村さんにそういう構想を伝えてみると『過去に介護施設に行った際に自分が思っている以上に周囲の方が喜んでくれた記憶があります』と言っていました。ならばとAIの開発をスタートさせたのがきっかけです」 だが、その開発風景はよほど最先端技術とは呼べないアナログの限りを尽くす代物だった。 「まず取り掛かったのが野々村さんの脳みそを少しでもAIに入れ込む作業でした。最初の3時間ほどで野々村さんの全身の動きを映像で取り込んだあと、本人の声や言葉はもちろん、野々村さん自身の幼少期からの記憶を17時間ほどかけて話してもらいました。このAIの重要な部分は知能が野々村さんであること。いわゆるAIであれば個性は邪魔になってしまいますが、今回は野々村さんの脳みそを少しでも多く移植することが必要でした」 撮影を終えた野々村も思わず「人間・野々村真が壊れかけました(笑)」と口にするほど過酷な収録現場だったが、技術面でもAI野々村真ならではの特殊な課題があったという。
AI野々村はすでに完成している
「AI業界では競争が激化していますが、AI野々村真に関しては技術面で言えばすでに完成されています。というのも、今のAI開発はいずれも技術としての進化がメイン。ChatGPTはその最たるもので、このAIはテキストでのやり取りが主になります。この分野は特に競争が激しくなっています。では、このテキストを例えば言葉、日本で言えば日本語を音として再現するとなればまた別のAIシステムが必要となる。もう一つがアバター。その人物を撮影して、動画として作り出すシステムもテキストや言語化とはまた別の技術です。いわば、それぞれが独立した開発技術として日進月歩で発展を遂げている状態で、この3つの統合ができていない。 加えてChatGPT を用いた会話しようとすれば1分間で数百円というコストがかかる。それでは月に数百万という利用料が必須で、現実的ではない。つまり我々がすべきことはすでにあるこの3つの技術をコストがかからないようにオリジナルのアルゴリズムを組み立て、統合する。そしてAIとしての野々村さんを作り出し、安価で運用できるようにすることです。裏を返せばこれ以上技術的に難しいシステムは必要ない。システムとして特別なものでなくてもいい。できるだけ安く運用できることが一番の課題となっています。目標は月額1万円程度。もっと言えば広告料などでマネタイズして、サービスを無料で提供できるようになることが理想です」 さらに現在のAI競争とは逆行する作業が続く。それが「脱AI」だ。