「私は人工知能で作られた野々村真です」…世界と逆行する注目のプロジェクト「AI野々村」が日本を救うかもしれない「深い理由」
世界各国で競争が激化
「これがデモ動画になります」 そう言って開発担当者が差し出したのは一台のスマートフォン。グリーンバックの画面には見覚えのある男性が映し出される。どこか不安げな表情はテレビで見かける様子と変わらない。だが、そんな姿と裏腹に本人の口から語られるのはよどみのないネイティブな英語だ。続けて男性はこう言った。 【マンガ】子どもの中学受験で「悪意なき毒親」が誕生してしまう「切ない理由」 「私は人工知能で作られた野々村真です」 世界各国で技術革新が進められているAI業界。 22年に公開された「ChatGPT」を皮切りに開発も激化の一途を辿っている。一昨年2月にはマイクロソフトが生成AI「Microsoft Copilot」をリリースすると、同年3月にGoogleが「Gemini」を発表するなど大手企業による本格参入が相次いだ。昨年6月にはアップルが「Apple Intelligence」を公表し、話題をさらった。 一方、日本は昨年2月に政府が生成AIの開発力強化の民間支援を目的とした「GENIAC」を発表したものの諸外国に比べると足取りは重いのが現実だ。 そんな各国から遅れを取るなかで話題を集めている日本企業によるAIプロジェクトがある。それが「AI野々村真」だ。開発の発起人となったAI音声対話型デジタルヒューマンプロジェクトの統括本部長の中島武氏はこう語る。(以下、「」は中島氏)
「一人いますよ」
「構想が生まれたのは一昨年の10月頃です。すでにAIという技術は世界でも注目されていましたが、一方でエンターテイメントの世界では人工知能というモノに関して後ろ向きに捉える部分がありました。でも、そう思うのは当然なんです。エンターテイメントでは人間味こそが武器。むしろ完璧な世界は求められていないわけです。そのタレントの個性こそが魅力ですから。 一方でもし、ここまで技術が進んだAIがそのタレントの個性を伸ばすことができれば、エンターテイメントの世界が広がるのではないかと感じたんです。といっても当初は監督の内野政明さんとともに妄想のように『そういうものがあったらいいなぁ』と話をする程度でした」 だが、そのとりとめのないアイディアはある一人の男の登場によって途端に現実味を帯びていく。 「せっかくAIを活用するなら日常的に課題が多い世界に向けて作ってみたいとは考えていました。そこで手が挙がったのが深刻な人手不足が叫ばれる介護業界です。施設側も本来はスタッフが利用者一人ひとりと色んな話をしてコミュニケーションを取りたいと思っているけれど、実際は作業に追われるジレンマがある。今の介護はそういう現場です。 介護の関係者からも『一般の人がおしゃべりしてくれるだけで嬉しいのに芸能人が来てくれたら利用者も喜んでくれますよ』と返事をいただいた。そこで大手事務所のスターダストプロモーションさんに『そういうタレントさんはいないですか?』と相談したところに『一人いますよ』と言われたのが野々村さんでした」