豪雪地帯の山奥に「奇跡の集落」なぜ誕生? 若い移住者あつまる背景、ドイツ人建築家の古民家再生と集落の人々の”よそ者”への温かなまなざし
伝統文化に加え、新しい文化を受け止める深い懐もある地域
さらに中村さんは、移住を決めた理由のひとつに、この地域の「文化」を挙げます。 「コミュニティーの心地よさも含め、住み心地としてはほかにも良い街はあったんです」と中村さん。 仕事でヨーロッパからアジアまで、これまでさまざまな海外で暮らしてきた彼女は、じっくり腰を据えて暮らす場所を探していました。
そんな時、たまたま友人に竹所のことを教えてもらい、このエリアを訪れてみると、思った以上に良い場所だと思ったそう。世界各地の有名な景勝地を見てきた彼女でさえも、カールさんと同じく、ここの優しい景色に魅了された一人です。 そしてお試し移住で暮らしたのが、カールさんが再生した古民家を活用した、竹所にあるシェアハウス。ここで「古民家は芸術品のようなもの。それが壊されることを止めたい」というカールさんの考えにも共感します。
その後、カールさんが手がけた「カールベンクス古民家ゲストハウス」を購入。3カ月先までの予約がすぐ埋まってしまうほどの、人気のゲストハウスになっています。 「住み心地でいえば、ほかの街でも良かったんです。それでも松代に決めたのは、ここには伝統的な文化もあれば、大地の芸術祭のような新しい文化もあったからです」(中村さん) このエリアでは縄文時代の火焔型土器が多数(そのひとつは国宝)見つかるほど、悠久の昔から続く暮らしの形跡が古い神社や祭などの行事に、さらに文献にも残っています。 それに加えて大地の芸術祭という、新しい文化も積極的に受け入れるという懐の深さもありました。古いしきたりに固執することなく、新しくても良いものなら積極的に受け入れる。カラフルな古民家を「こんなものは伝統的な古民家じゃない」と拒否するのではなく、自治体までもがシェアハウスとして積極的に受け入れるのも、同じことかもしれません。 「美味しい食べ物、きれいな景観、心地よいコミュニティー、そして文化。私が『こういうのがあったら人生幸せだろうな』と思っていたことが、ここには全てありました」(中村さん)
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