豪雪地帯の山奥に「奇跡の集落」なぜ誕生? 若い移住者あつまる背景、ドイツ人建築家の古民家再生と集落の人々の”よそ者”への温かなまなざし
移住者と住民のコミュニケーションから、新しいものが生まれる
イエローハウスの吉田さんも、竹所のコミュニティーについて尋ねると「とても心地よい」と表現します。 「約10年前から、週末に限ってカフェをやることにしたのですが、ちょくちょく訪れていただけるのはもちろん、お米や野菜などをたくさんいただくのです。週末に東京から来てみると玄関にドンと野菜が置いてあったり(笑)。東京なら、こういうのは買うのが当たり前なんですがね」
取材日のイエローハウスのメニューは「丹保さんのごはんセット」(1800円)。竹所集落で丹保さん(屋号)が棚田でつくられているお米がメインです。
いただきものはカフェで提供したり、それでも余るものはぬか漬けにしたり。「カフェが終わって外の看板を引き上げる際に、近所の人とばったり会えば『今日はたくさん(お客さんが)来ていたね』と声をかけてくださったり。本当にありがたいです」(吉田さん) さらに、カールさんが再生した松代の古民家「カールベンクス古民家ゲストハウス」を、令和5年(2023年)に購入して令和6年(2024年)4月からここで暮らしながらゲストハウスを運営している中村紀子(なかむら・のりこ)さんは「ここは人と繋がりやすい」と言います。
カールベンクス古民家ゲストハウスの1階の共用スペース。赤いソファの前に置かれている分厚い一枚板のテーブルはカールさんによるもの。
「カールベンクス古民家ゲストハウス」の客室のひとつ。客室は2部屋のみで、どちらにもダブルベッド一台と専用のトイレ、洗面台、シャワーがあります。
「ゲストハウスにはキッチンがあるのですが、一泊二日くらいの滞在だと、自分で料理をつくったりせず、コンビニのお弁当を温めて終わりという人がほとんどでした。せっかく美味しいものがたくさんある松代に来たのに、それじゃあもったいないなと周囲の人に話したところ、近くにレストランをオープンするというシェフがいるから、相談してみたら?と言われたんです。すると、ゲストハウスの宿泊者向けに特製のお弁当をデリバリーしてもらえることになりました」(中村さん) また、つい先日は、近くの酒屋さんが中村さんに声をかけたことがきっかけで、このゲストハウスでワイン会を開いたのだとか。さらに、芸術祭の作品の一環としてプロの音楽家が地元の人を集めて結成した楽団に参加するという経験も。「ここにいると『面白いことならすぐやろう』みたいな感じで、いろんな人と次々に繋がっていくんです」(中村さん)
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