駅前で「すみません、1000円だけ貸してください」と声をかけられました。怖くて断りましたが、こういうのって「詐欺」なんですよね?
なぜ寸借詐欺に騙されてしまうのか
寸借詐欺に騙されてしまう根本的な要因は、「正常性バイアス」にあります。正常性バイアスは、社会心理学や災害心理学で重要視される心理的傾向で、異常事態を正常の範囲内と捉え、心の平静を保とうとする働きです。 しかし、寸借詐欺のような非日常的な状況下では、この正常性バイアスが逆効果となり、被害者が判断を誤る主要因となってしまいます。 例えば、突然見知らぬ人から金銭を求められるという異常事態に直面しても、正常性バイアスにより、「困っている人を助ける日常的な行為」として認識してしまうのです。 同様に、断ることへの罪悪感やその場を早く離れたいという心理も、正常性バイアスによって「普段なら助けるはずの状況」という誤った認識から生まれます。 さらに、犯罪者の巧みな話術も、被害者の正常性バイアスを強化する方向に働きかけます。同情心に訴えかける手法は、被害者の「困っている人を助けるのは日常的なこと」という認識を強めます。 これらの要因が複合的に作用することで、被害者は「この程度の金額なら貸してあげても良い」という判断に至ってしまうのです。つまり、寸借詐欺の被害者は、異常事態を正常性バイアスによって、適切な警戒心を持つことができず、結果として詐欺に遭ってしまうのです。 寸借詐欺から身を守るためには、これらの心理的メカニズムを理解し、突然の要求に対しては一呼吸置いて考える時間を取ること、そして必要に応じて周囲の人や警察に相談することが重要です。 事前に寸借詐欺というものがあると把握しておくだけでも、被害を防ぐきっかけになるでしょう。
寸借詐欺に遭遇した場合の対処法
寸借詐欺に遭遇した際の対処法は、はっきりと断ることです。「お金は貸せません」と明確に伝え、相手の要求を断固として拒否することが大切です。 次に、その場を速やかに離れ、人混みや明るい場所に移動してください。安全を確保しつつ、駅員や警察への通報も検討しましょう。犯人が新たに別の人を標的にして寸借詐欺を働くなど二次被害を防ぐことにもつながります。 避けるべき対応として、理由を聞いたり会話を続けたりすること、個人情報を教えること、現金以外の方法で対応しようとすることです。これらは、詐欺師につけ入る隙を与える可能性があるため、注意が必要です。 さらに、都道府県によっては交番でお金を借りられる「公衆接遇弁償費」という制度を利用できる場合があります。きちんと本人確認をしたうえで、必要最小限のお金を貸してくれる公的なサービスです。 もし見知らぬ人から金銭の要求を受けた際は、制度を利用するよう伝えてみても良いでしょう。 寸借詐欺から身を守るためには、これらの対処法を事前に理解し、実際の状況で冷静に行動できるよう心構えをしておくことが大切です。自分の安全を第一に考え、疑わしい状況には毅然とした態度で対応することが、被害を防ぐ最善の方法です。