先進国のなかでも、深刻なほど「所得格差」の大きい日本…なぜ日本でこんなにも格差が拡大しているのか?
社長と社員の給与格差、どれくらいならOKですか? 日本では、資産5億円以上の超富裕層は9万世帯。単身世帯の34・5%は資産ゼローー。 【写真】格差は避けるべき課題なのか?貧困、格差、大金持ちにまつわる資本主義の宿命 富裕者をより富ませ、貧困者をより貧しくさせる今日の資本主義。 第一人者が明かす、貧困大国・日本への処方箋。 本記事では〈社長と社員の「給与格差」、どれくらいなら許せますか? …日本では、企業の経営トップと従業員の報酬格差は「最大174倍」もあった! 〉にひきつづき、格差社会の現実をみていきます。 ※本記事は橘木俊詔『資本主義の宿命 経済学は格差とどう向き合ってきたか』から抜粋・編集したものです。
貧富の差を示す統計指標
格差社会の現実がどうなっているかを検証しておこう。結果の格差を示す代表例として所得格差があるが、所得格差の検証方法に関しては研究の蓄積がある、貧困者と貧富の格差に注目して現実を知ることにする。 高所得者と低所得者の間の所得差を端的に示す統計指標にはいくつかある。すなわち、所得格差の程度を示す数字の指標である。例えば、(1)トップ(あるいはボトム)何名の高所得者(あるいは低所得者)の得る所得総額が全人口の所得総額に占める比率、(2)ジニ係数、(3)アトキンソン指標、(4)タイル指標、(5)対数分散、など各種ある。 これらのうちもっともわかりやすく、かつ頻繁に用いられる指標はジニ係数である。学問的にいえば、アトキンソン指標(人びとにとって社会で好ましい所得分配はどういう姿か、の価値判断をいろいろ前提にして、所得格差を計測する指標)、タイル指標(エントロピー〈情報の価値〉を考慮したうえで格差の計測された指標)のように価値の高いものもあるが、これらは種々の高度に学問的な側面に配慮せねばならず、解釈が複雑になる。ジニ係数が何よりも単純明快なので、ここではこの指標を用いる。 ジニ係数はイタリアの統計学者ジニによって開発されたもので、0.0(完全平等)と1.0(完全不平等)の間の値をとる。数値が大きいほど不平等度が高い(すなわち所得格差が大きい)ということになる。日本での過去から現在までの推移と、国際比較に注目しておこう。