自民総裁選 所見演説と共同会見(全文1)いよいよ憲法改正に取り組むとき
いよいよ、憲法改正に取り組むときが来た
25年前、私は初めて総選挙に挑戦しました。街宣車に乗って農村地帯を走っておりますと、1人のおじいちゃんが農作業の手を休めて駆け寄ってきました。そして私の手をしっかりと握ってこう言ったんです。晋三さん、信じちょるけ、この地域を守っておくれよ。私はこの声に押されて初めて当選することができた。このおじいちゃんの手はごつごつしていました。そうです、農林水産業は厳しい仕事です。しかし、このごつごつした手で地域を守り、食を支え、そして美しい田園風景を守ってきた、国のもといです。私はこの大切な農林水産業を必ず守ってまいります。 しかし平均年齢は66歳を超えた。守るためにこそ、攻めなければならない。そして今、農林水産物の輸出額は、5年連続、過去最高記録をし、倍近い8100億円になった。1兆円の目標も見えてきました。そして生産農業所得はこの18年間で最も高い水準になっている。農家の皆さんの手取りを増やしていくために、今、改革を進めていきます。そして若い皆さん、40歳代の以下の新規就農者、4年連続で2万人を超えました。統計を取り始めて初めての出来事であります。若い皆さんが自分たちの夢や希望を、そして人生を懸ける農業に、今、変わりつつあります。皆さんが安心して再生産に取り組むことができるように全力を尽くしてまいります。 観光立国も地方創生の大きな起爆剤になっています。そこにしかない風景、そこでしかできない経験を求める今の観光は、地方にとって、全ての地方にとって大きなチャンスになっています。そうして、北は北海道から南は沖縄まで、全て47の都道府県で有効求人倍率は1倍を超えました。これはあの高度経済成長時代にもバブル時代にも実現できなかった初めてのことであります。ようやく、やっと、景気回復の温かい風が地方に届き始めた今、地方税収は過去最高の40兆円になりました。そして地方の法人関係税収は政権交代前と比べてほとんどの県で4割、5割増えているんです。もちろん、まだまだ実感ないよという方がたくさんいらっしゃることはよく承知をしております。だからこそ、今、進めてる地方創生を力強くこれからも進めてまいりたいと考えております。 今までに私が述べてまいりましたさまざまな成果は、私たちみんなの成果であります。そして国民の皆さまの努力の結果であります。私たちは決して諦めなかった。強い信念と使命感を持って、諦めの壁を次々と打ち破ってきたんです。たそがれを迎えていると言われた日本はもう過去のものとなりました。今、私たちは新しい朝を迎えています。今こそ、日本の明日を未来に向けて切り開くべきときです。この強い思いで解散総選挙に打って出たのは、ちょうど昨年の今ごろ、わずか11カ月前のことでありました。あのとき頂いた国民の皆さまの力強い支持に、国民の負託に応えていくことは、自由民主党の、そして私たちの責任であります。 国難とも呼ぶべき、少子高齢化。しっかりと向き合いながら、あの選挙でお約束をした教育の無償化をしっかりと実現してまいります。未来を担う子供たちに、そして子育て世代に、思い切って投資をしてまいります。同時に、高齢者の皆さまが幾つになっても活躍できる、そういう社会をつくっていかなければなりません。全ての世代の皆さまが安心できる社会保障制度へと、3年で改革を断行してまいります。 さて、世界は今、保護主義の台頭に対して懸念が深まっています。経済のグローバル化の中、急速な変化に対して不安や不満が生じています。しかし、貿易制限措置の応酬はどの国の利益にもなりません。むしろ知的財産、環境、労働といった幅広い分野において、公正なルールを打ち出していくことによって、この不安や不満に対応し、そして世界の貿易投資を拡大していくという発想に立たなければなりません。だからこそ日本はTPP11、日EU・EPA協定において、リーダーシップを発揮をし、合意へと導いてまいりました。今こそ日本は自由貿易の旗手として、新しい時代のルール作りを主導していかなければなりません。 東アジアにおいては、冷戦終結後も戦後の枠組みが長らく残ってきました。その中で、先般、米朝首脳会談が初めて開催されました。そして、朝鮮半島の非核化について約束が交わされた。トランプ大統領は拉致問題について、私の、日本の考え方を、金正恩委員長に伝えてくれた。次は私自身が金正恩委員長と向き合い、拉致問題を解決しなければならない、そう固く決意しております。 プーチン大統領とは、今夕、首脳会談を行います。培った信頼関係の上に、領土問題を解決をし、そして平和条約を締結するための交渉を着実に前に進めてまいります。そして日露新時代を切り開いていきたいと考えています。 先般、李克強首相が、中国の首相としては8年ぶりに日本を訪問し、習近平主席との相互訪問を約束しました。今、日中関係は新しい段階に入っています。今こそ皆さん、戦後日本外交の総決算を行い、アジア、太平洋からインド洋へと至るこの広大な地域に、日本がリーダーシップを発揮をし、国際社会と協調し、新しい時代の平和と繁栄の礎を築いてまいります。 この6年間、私は皆さまとともに、さまざまな課題に取り組んでまいりました。時には困難な課題もありました。しかしそれが、みんなで議論して、結果、国民のために必要だとの結論に至れば、一致協力してなすべきことをなしてきた。これこそが皆さん、戦後一貫して日本政治の背骨を担ってきた私たち自由民主党の誇りではないでしょうか。 いよいよ、憲法改正に取り組むときが来ました。今年も私は防衛大学校の卒業式に総理大臣として出席をし、任官したばかりの若々しい自衛官たちから服務の宣誓を受けました。「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託に応える」、この重い宣誓を受けました。そうです。彼らは国民を守るためにその命を懸けるんです。しかし、自衛隊が憲法違反ではないと言い切ることができる憲法学者はわずか2割にしか過ぎない。合憲性について議論がある旨、ほとんどの教科書に記述があります。自衛官たちの子供たちもこの教科書で学ばなければならないんです。皆さん、このままでいいんでしょうか。彼らが誇りを持って任務を全うできる、そういう環境をつくっていくことは今を生きる政治家の、私たちの使命ではないでしょうか。憲法にしっかりと日本の平和と独立を守ること、自衛隊、と書き込んで、私たちの使命を果たしていこうではありませんか。 今回の総裁選挙から、18歳、19歳の皆さんが1票入れます。彼らの1票は自由民主党の未来に向けた1票、そして日本の将来に向けた1票であります。この思いに応えていくことは、私たちの責任であります。子供たちの世代に、希望あふれる、誇りある日本を、ともに引き渡していこうでありませんか。私はその先頭に立つ決意であります。どうかご理解、ご支持を賜りますように、よろしくお願いを申し上げます。ありがとうございました。 【連載】自民総裁選 所見演説と共同会見 全文2へ続く