放送翌日かかってきた横槍電話…『Nスぺ』登場の元テレ東Pが語るテレビ局の現場で顕著化するある傾向
『おむすび』の不調の原因か?
テレビが配信との闘いのなかで誇れるのは放送の長い歴史の中で培った芸能事務所との蜜月関係であり、それは「どんなことがあっても切れない」。 NHKスペシャル『ジャニー喜多川』ラスト7分間の衝撃 “雪解けムード”ぶち壊した「報道部の覚悟」 今回のNHKの旧ジャニーズ(以下、「旧J」と省略)解禁で、そう皆が思い知ったと思います。それが、朝ドラ『おむすび』不調の原因にもなっているんです―――。 ジャニーズ性加害問題を検証した『NHKスペシャル』への出演が話題を呼んだ元テレビ東京プロデューサーで桜美林大学芸術文化学群教授、田淵俊彦氏は、「テレビ局の2つの傾向」の激化が『おむすび』の現場を惑わせていると語ります。 ◆『Nスぺ』での実体験や考察からも…… 前回、私はこのFRIDAYデジタルでNHK朝ドラ『おむすび』についての論考を発表した。そのなかで、朝ドラを担当する東京局(A制)と大阪局(B制)との間で差を出そうとするがゆえの功罪を指摘した。また、朝ドラの「主人公像」に着目し、過去10年間の比較をおこなって、A制、B制それぞれの特徴を浮き彫りにした。 今回は同じくこの朝ドラ『おむすび』を一味違った視点から斬ってみたい。 それは、「『おむすび』不調の原因は、近年テレビ局で顕著化するある傾向にある」という分析だ。それらの傾向は、先日私が出演した『NHKスペシャル(以下、『Nスぺ』と省略)~ジャニー喜多川 “アイドル帝国”の実像』での実体験や考察からも読み取ることができる。その実例も惜しみなく示してゆく。 ◆テレビ局で顕著化する「ある傾向」とは 『おむすび』不調の原因となっている「テレビ局のある傾向」とは何なのか。それは以下の2つである。 ①局内の上から下に物申すことが多くなった ②タレント事務所の力が強まった まず①の「局内の上から下に物申すことが多くなった」という傾向から説明してゆきたい。 11月5日付の『東京新聞』は、今回の『Nスペ』に関してNHKでドキュメンタリー番組を手がけた永田浩三・武蔵大教授のコメントを引用し、「NHKでは経営側の意向と関係なく、番組制作が進む」「ドキュメンタリー番組は現場の問題意識が優先され、上層部の指示で作られるものは原則ない」と記しているが、私はそうではないと指摘したい。 それは実際の番組を見れば一目瞭然である。性加害という大きな問題を検証する番組なのに当時を知る人物のインタビューが放送されていないということ、ディレクターである中川雄一朗氏がそれを望んでいたにもかかわらず実現しなかったということ。 これらの状況を鑑みれば、上層部の何らかの指示が現場になされた可能性があるのではないか。「そんなことをされたら、現場は大変なんじゃないか」と読者の皆さんは思うだろう。だが、〈NHKという組織〉というのはそういうものであると、私自身も実際に体験し、実感している。