放送翌日かかってきた横槍電話…『Nスぺ』登場の元テレ東Pが語るテレビ局の現場で顕著化するある傾向
制作会社、関連団体、NHK本体……3人のプロデューサー
私はテレビ東京(以降、「テレ東」と省略)から関連会社のテレビ東京制作という制作会社に出向していたおりに、『高専ロボコン』をはじめとするドキュメンタリーをNHKで数多く手がけた。NHKでは制作会社への番組制作委託をおこなう際に、NHKエンタープライズやNHKグローバルメディアサービスといった関連団体を通すことがある。その場合には、制作会社、関連団体、NHK本体という3者のプロデューサー(以下、「P」と省略)が立つことになる。すると、どんなことが起こるだろうか。 編集のプレビュー作業というチェックは、まず制作会社のPと関連団体のPとの間でおこなれ、関連会社のPから直しの指示が出る。次に本体のPがチェックをしたときに、関連会社のPの指示がひっくり返ってしまうことが多々としてある。 ここまでは、制作段階でありがちなパターンだ。問題はここからである。関連団体のPはだいたい本体からの出向者であるため、本体Pよりも年次が上だったりした場合には、本体Pの指示を関連会社Pが再びひっくり返すことがあるのだ。するとどんなことになるか。 編集直しの指示は、プレビューを繰り返すたびに「A⇒B⇒A⇒B」といったように堂々巡りをして、〝笑えない〟ギャグのような事態に陥る。当然、現場は混乱して右往左往することになる。 この例からわかるように、NHKという組織の特性が、ときに現場との意思疎通を断絶させてしまうのだ。上層部に忖度する本体Pが、上層部の意向や指示を自分の考えとして伝えることもあるだろう。巨大な組織において多くの人が番組制作に関与するNHKにおいては、意思統一が取りにくいという機能不全が起き始めている。いや、すでにそれは蔓延しているかもしれない。 公共放送であってもそのような「上層部と現場の断絶」や「上から下に物申す風潮」が激しくなったいま、民間放送においてはさらにその傾向は顕著化している。今回の『Nスペ』への出演を経て、私はそれを痛切に感じた。以下の話はブログでもお伝えしているが、改めて当該問題との関連性を指摘しておきたい。 ◆『Nスぺ』放送翌日にかかってきた一本の電話…… 事の発端は、放送翌日に私の携帯にかかってきた一本の電話だ。 相手はテレ東の広報担当幹部からであった。後輩にあたるその人物は「ご無沙汰しております」という言葉を皮切りに驚くべきことを話し始めたのである。 それは「昨日の放送で多くの視聴者から交換台に電話がかかってきて困っている」「制作局(番組を作る部署)の中でも動揺が走っている」「だから、今後『元テレ東』という肩書を使わないでほしい」「加えて、テレ東時代に経験したことは話したり書いたりしないでほしい」という主に4つの要望だった。 私は相手の話を聞いているうちに、ある思いがむくむくと頭をもたげてくるのを感じた。 「待てよ、これって基本的人権の侵害じゃないのか」 詳しい考察はブログをお読みいただきたいが、この例からわかるように、少し前だと「これは企業ガバナンス的にヤバいだろう」とちゃんと考えられるはずのこともすっ飛ばして、地位ある立場の人間が辞めた者に「下達」してくるのである。 それはテレビ局の人材劣化ということもあるだろうが、一方では〝そうも言ってられない〟、いわゆる〝なりふり構ってはいられない〟事情がある。