「年間220万円の贈与ができる」相続対策、最強の4ステップ
● 3. 評価の引き下げ対策 評価の引き下げ対策とは、所有している財産の種類を見直したり、収入の帰属先を変更したりすることで、相続税評価額を下げるアプローチです。 例えば、現金の一部を生命保険に変えることで、「500万円×法定相続人の人数」の非課税枠を活用できます。また、現金を不動産に変えることで、評価額を圧縮することも可能です。中小企業のオーナーの場合は、現金を株式に変えることで評価を引き下げることができます。 さらに、自宅のリフォームや生前にお墓を購入することも、評価額を下げる効果があります。また、アパート経営者の場合、アパートの所有権を事前に相続人に移すことで、家賃収入を相続人に帰属させ、相続税の負担を軽減することも可能です。 ● 4. 生前贈与対策 生前贈与対策は、早期に財産を移転させることで、将来の相続税負担を軽減する方法です。2024年からは、暦年課税制度と相続時精算課税制度を組み合わせた新しいプランニングが可能になりました。 暦年課税制度とは、普段からよく聞く、「年間110万円まで非課税で、超えた部分に贈与税の税率をかけて贈与税を計算する」といったオーソドックスな贈与税の計算方法です。 一方で、相続時精算課税制度とは、「贈与するときは最大2500万円まで贈与税を非課税にするが、贈与した人が亡くなったときは、過去に贈与した財産をすべて相続財産に持ち戻して相続税を計算する」という贈与税の計算方法です。 この制度は、60歳以上(※)の父母、祖父母から、18歳以上(※)の子や孫などに対して行う贈与に使うことができます(※贈与する年の1月1日時点の年齢)。2024年1月1日以降、相続時精算課税制度を選択した場合、年間110万円までの非課税枠が新設されるので、年間110万円までの贈与は非課税となり、申告義務も無くなりました(選択した年は、選択の届出が必要)。 さらに、将来相続が発生したときに、非課税枠内で贈与した分は相続財産に足し戻さなくてもよいこととされましたので、年間110万円までであれば完全に非課税にできます。ただ、年間110万円を超えた贈与は累積され、2500万円を超えると20%の贈与税がかかりますが、相続発生時にすべて相殺されるので、税負担が増えることはありません。 例えば、お父さんが相続時精算課税制度を選択し、お母さんが暦年課税制度を選択することで、合計220万円まで非課税で贈与することができます。このように、両制度を組み合わせることで、非課税枠を最大限に活用できます。以上の4つのステップを順番に実行することで、相続税対策は効果的に進められます。それぞれの対策を計画的に行い、最適な相続プランを立てることが重要です。 年末年始、相続や贈与のことで家族と話し合う際、ぜひ参考にしてください。 (本原稿は『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』の一部抜粋・追加加筆を行ったものです)
橘慶太