「モモ(絵本版)」訳者・松永美穂さんインタビュー 名作の哲学的なエッセンスを丁寧に凝縮
ミヒャエル・エンデの『モモ』(岩波書店、1976年刊)と言えば日本でも名作として知られる作品ですが、本書『モモ(絵本版)』(光文社)は、本国のドイツで刊行50周年を記念して企画された絵本版です。日本語に訳した松永美穂さんに、作品について聞きました。(文:大和田佳世) 【画像】「モモ(絵本版)」中身はこちら
美しい絵で浮かび上がる『モモ』の世界
――町のはずれの、こわれかけた野外劇場に住んでいる女の子。はじめは怪しむ町の人たちですが、会って話すうちに、みんながその子のことをだんだん好きになり、たくさんの人が会いに行くようになります。名前はモモ。児童文学の名作『モモ』の主人公で、日本でもよく名前を知られた女の子ですね。『モモ(絵本版)』をなぜ訳すことになったのですか。 出版社から翻訳のお話をいただきました。『モモ』は影響力を持った特別な作品ですから、最初は「私でいいのかな」とは思いましたが、絵本を訳すのは好きなので、翻訳させていただくことにしました。私自身にとっても『モモ』はエンデ作品の中で一番好きな作品です。 ――はじめて『モモ(絵本版)』の原書を見たときはどんなふうに感じましたか。 こんなに哲学的な内容だったかなとあらためて思いました。同時に、スイス在住のシモーナ・チェッカレッリさんという方の絵がきれいだと思いました。細かく描き込まれ、壮大な場面もあり、モモの顔が知的な感じで描かれているのが印象的だなと。 ――黒いちぢれ毛のモモは、どこからやってきたのかもわからない女の子として描かれます。作者のミヒャエル・エンデはドイツ人ですから、子どもの頃に『モモ』を読んだときはドイツの子かと漠然と思っていたのですが、絵本を見ると違うような……。 モモの友達の、道路掃除のベッポや、観光ガイドのジロラモという名前からして、なんとなくイタリアっぽいですよね。物語の舞台についてはっきりエンデは書いていないと思いますが、古代ギリシャやローマなど、野外劇場で催し物がされていた跡が今も残っている、南ヨーロッパ的な感じがします。