センバツ2023 智弁和歌山、春の便り 巻き起こせ赤い旋風(その1) /和歌山
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の選考委員会が27日開かれ、智弁和歌山の出場が決まった。新型コロナウイルスの影響で中止となった2020年以来3年ぶりの選出で、出場は15回目となる。組み合わせ抽選会は3月10日。大会は同18日に開幕する。【大塚愛恵、橋本陵汰、加藤敦久】 今回から、オンライン中継で出場校が発表されることになったセンバツ。智弁和歌山の会議室には、中継を映すスクリーンが設けられた。午後4時過ぎ、宮口祐司校長は近畿地区で3番目に校名が呼ばれたのを見届けると、目を細めて拍手し、周囲の関係者と拳を突き合わせて喜んだ。 吉報を持ち、選手たちの待つ室内練習場へ向かった宮口校長は「諸君、おめでとう。さまざまな課題はあると思うが、残された時間で克服して最高のコンディション、パフォーマンスに持って行ってもらえたら」と激励した。選手たちは力強いまなざしを向け、耳を傾けていた。 その後、校舎へ移り、選手や関係者らによる祝いの席が設けられた。一同が出場決定をジュースで乾杯し、祝福した。会場では出場決定を伝える号外が配られ、選手らが談笑しながら読みあっていた。 ◇感謝、ワクワク、喜び 選手ら闘志新たに センバツ出場を決め、選手たちは意気込みを新たにした。 背番号1を背負ってきた吉川泰地投手(2年)は「出場が決まり、ここから始まるという気持ち。活躍することで、今まで支えてくれた両親や学校関係者などに感謝の気持ちを示したい」と闘志を燃やした。 また、22年6月に野手から転向した清水風太投手(同)は、「目標は日本一。今はその通過点。ワクワクしている」と、その投球と同様の強気を見せた。清水投手の父・直さんは、1996年の春夏共に明徳義塾の主将として甲子園に出場した。「甲子園は観客を味方にするようなプレーをすることで力を発揮できる場所と聞いてきたので、自分もそうした投球ができたらいい」と話した。 近畿大会で3本塁打を放ち、ベスト4進出に貢献した主砲の中塚遥翔選手(同)は「素直にうれしい気持ちでいっぱい。4番を打たせてもらっているので、チームが苦しいときに一本出せるバッターを目標に、流れを変える打撃がしたい」と大舞台を見据えた。 9番打者を多く任されてきた小畑虎之介選手(同)は「1年時、夏の甲子園でグラウンドに立ったが、2年時は出場機会がなかった。今回、自分たちの代で甲子園に行けて良かった。守備を基本に、全員で勝ちに向かっていきたい」と誓った。小畑選手の父で、野球部の保護者会代表の小畑憲介さん(41)は「ほっとしている。全国制覇を目指して頑張ってほしい」と活躍を期待していた。 ◇逃さぬ好機、光る打撃力 秋季近畿大会回顧 智弁和歌山は22年秋、和歌山1位で臨んだ近畿大会で、持ち前の打撃力が光った。1回戦は京都国際(京都2位)との好カードとなった。先制を許したが、青山主将の本塁打など14安打を放って逆転勝ちした。 準々決勝では社(兵庫3位)に序盤から得点を重ね、付け入る隙(すき)を与えずにコールド勝ち。準決勝で報徳学園(兵庫1位)に逆転負けしたものの、主砲・中塚選手の本塁打をはじめ、長短打を織り交ぜる切れ目のない打線が鮮烈な印象を残した。 投手陣は球威のある右の清水、多彩な変化球を投げ分ける左の吉川の両投手が柱で、試合をつくった。失点を抑える中で、走力のある多田羅浩大選手(2年)らの出塁から青山主将、中塚選手ら迫力十分の中軸で好機をものにするのが攻撃スタイルで、更に下位につないで大量点を狙う。センバツに向け、中谷監督は「投手を含めた守備面の強化、得点パターンをいくつ作れるかが課題」とみている。 ◇本紙号外を配布、活躍期待の声も JR和歌山駅前 智弁和歌山の出場決定を報じる号外は27日夕、和歌山市のJR和歌山駅前でも配られた。毎日新聞県専売会青年会のメンバーらが道行く会社員や学生らに手渡し、吉報を伝えた。 同市の山崎順平さん(63)は「智弁も強いが、全国には他にも強豪がいる。リードされても諦めず、粘り強く勝ち上がってほしい」と話した。親戚が智弁和歌山野球部OBという同市の60代男性は「ぜひ優勝してほしい」と期待を込めた。【山口智】