“急所”の飲食中心の「緊急事態宣言」1か月で解除できるか?
菅義偉(よしひで)首相は7日、新型コロナウイルス対策の特別措置法(特措法)に基づく「緊急事態宣言」を発出した。東京都や埼玉県、千葉県、神奈川県の1都3県が対象で、期間は2月7日までの1か月間。社会経済活動全般を止めた昨年春の緊急事態宣言とは異なり、飲食店の営業時間短縮など飲食の場での感染リスクを重視した対策を講じる。宣言発出が決定された7日、東京都では2447人と過去最多を大幅に更新する新規感染者が確認された。想定通り、宣言は1か月で解除することはできるのか。 【Q&A】新型コロナ報道で耳にする「ステージ」って何?
1か月後には必ず事態を改善させる
「昨年の緊急事態宣言の折には安倍総理が自ら出席して説明した。ただ今回、残念ながら菅総理の出席と説明がない」 政府が緊急事態宣言の発出方針を国会に説明する衆院議院運営委員会の場で、立憲民主党の枝野幸男代表は菅首相の不在を問題視した。 枝野氏は「『勝負の3週間』と言いながらGo Toキャンペーンを止めることもせず、有効な対策を取らなかった」「感染拡大防止よりも経済を優先してきた姿勢が後手後手の対応を招いた」などと政府の対応を批判したが、答弁はコロナ対策担当として西村康稔(やすとし)経済担当相が行った。 その3時間後の午後6時。首相官邸で菅首相が記者会見し、コロナ感染の“急所”として掲げた飲食店の午後8時までの時短営業要請や、午後8時以降の不要不急の外出自粛、人流を抑えるためのテレワーク7割実施、イベント入場者数の厳格化などの対策を説明した。 冒頭発言の最後に「もう一度、皆さんに制約のある生活をお願いせざるを得ない」「1か月後には必ず事態を改善させる」と国民に協力を要請し、若者に対し「世代を超えて大切な命を守るために、ご自身のことと捉えていただいて行動をお願いしたい」と呼びかけたが、菅首相が思いを国民に語りかけた場面は多くはなかった。
1か月未満で「ステージ3」は簡単ではないが……
今回の緊急事態宣言では「この1年間で政府も(コロナについて)かなり学んできている」(菅首相)として、飲食の場での感染リスク低減を目指す対策を中心に据えている。これは、家庭内感染や院内感染は外からウイルスが持ち込まれた「結果」であり、その上流の「原因」は飲食の場での感染である場合が多いとの専門家の分析・推定に基づく。 前回の宣言時のように、社会経済活動を一律に止めるわけではないことや、感染規模が昨春より大きいことなどから、1か月間での宣言解除は難しいとの見方もある。政府諮問委員会の尾身茂会長も5日の会見で、1か月未満で政府の分科会が提示する「ステージ3」相当の感染レベルまで1か月未満で下げるのは「至難の業」と語ったと伝えられる。 この日の首相会見でも、記者から「1か月で解除は可能か」との質問が出た。それに対し、尾身会長は「1か月未満にステージ3に近づけるのはそう簡単ではないが、4つの条件を満たすために、日本の社会を構成する皆がしっかり頑張れば可能だと思っている」との認識を示した。 尾身氏が触れた「4つの条件」とは(1)具体的で強い対策(2)国と自治体が一体感を持って、明確なメッセージを国民に伝える(3)なるべく早く(特措法を)法改正して経済支援などと紐付ける(4)国民のさらなる協力が得られる――の4点。