センバツ高校野球 能代松陽、堅守で健闘 仙台育英、着実に8強 /秋田
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)は大会第9日の28日、仙台育英(宮城)は龍谷大平安(京都)に6―1で勝利し、2年ぶりのベスト8進出を果たした。能代松陽(秋田)は前回優勝の大阪桐蔭(大阪)に挑み、ロースコアの投手戦に持ち込んだが0―1で惜敗した。仙台育英は大会第10日第4試合(29日午後4時開始予定)で報徳学園(兵庫)と対戦する。 ◇能代松陽、堅守で健闘 優勝候補相手に惜敗 能代松陽は持ち前の堅い守備で優勝候補の大阪桐蔭を相手に接戦を繰り広げた。「負けたら引退のつもりで」を合言葉に試合に臨んだ選手らに、アルプススタンドに駆けつけた約350人の応援団も声をからした。 初回、「冷静に、打たせて取ろう」とマウンドに上がった森岡大智(3年)が四球や盗塁で得点圏に走者を背負うも無失点で切り抜けた。「『落ち着いていけよ』という仲間の声掛けで持ち直し、変化球を増やした」といい、その後は安定した投球でチームをけん引した。 両者とも譲らない展開に、吹奏楽部の村岡里香部長は「一人一人に届くよう応援したい」と演奏に力を込め、応援部の半田呼夢(こゆめ)部長も「大阪桐蔭とここまで戦えているのがすごい」とエールを送った。 無得点で迎えた六回。佐々木陸仁(同)が「(五回裏後の)整備後に出塁したらチームが乗る」と中前に両チームを通じて初安打を放ちアルプススタンドを沸かせた。続く保坂大悟(同)のバントで初めて得点圏に進んだが、得点に至らなかった。 七回には虻川颯汰(同)が「森岡のために打とうと強い気持ちで入った」と三塁内野安打。1死一、二塁から暴投で二、三塁に好機を広げたが、後が続かなかった。見逃し三振に倒れた柴田大翔(同)は試合後「バットを振れない弱さがあった。チャンスを生かせず悔しい」と涙をこぼした。 それでも大会屈指の好投手2人を相手に4安打。主将の大高有生(同)は「勝てない相手ではなかった。勝負強さを磨いて夏にリベンジしたい」と手応えをつかんだ。 相手打線を苦しめた森岡は99球を投げ被安打2で完投。「ストレートに伸びがあった。勝てる試合だったので悔しいが自信がついた」と胸を張った。工藤明監督も「粘り強く投げ抜いた良い投球だった」と評価した。 父修さん(46)は、森岡が小学生の頃にアウトを取れずに泣きながらマウンドに立っていたのを覚えている。堂々とした投球に「気持ちでは負けないと思っていたが、ここまでとは思わなかった。褒めてあげたい」と目を細めた。OBで兄の大翔さん(20)も「昔は普通の選手で、野球を続けるかも迷っているように見えた。高校で仲間に恵まれ成長している」と喜んだ。【猪森万里夏、中田博維】 ◇仙台育英、着実に8強 足絡め攻撃、継投安定 仙台育英が安定した試合運びを崩さず、足を絡めた攻撃で突き放した。約250人の応援団が見守る中、初回に先頭打者の山田脩也(3年)が左前安打で出塁し、盗塁や相手投手の暴投で三塁まで進塁。寺田賢生(同)の内野ゴロの間にホームに生還して、チームを勢いづけた。 主将としてもチームを引っ張る山田の活躍にアルプススタンドは大きな歓声が上がり、応援団で太鼓を担当する野球部員の利根川英駿さん(2年)は「よく初回から打ってくれた」と喜んだ。吹奏楽部の西城広葉部長も「他校に負けずに応援で選手の後押しをしたい」と演奏で盛り上げた。 四回は1死二塁のチャンスで湯浅桜翼(2年)に打席が回った。初戦で4打数無安打だった悔しさをばねに「ここで自分がつなぐ」と球を見極め、左前適時打で1点を追加した。七回に湯田統真(3年)と浜田大輔(2年)が連続安打を放つなどして2点を追加。続く八回にも浜田の右前適時打で更に2点を加えた。 打線に応えて投手陣も奮起。先発の湯田は「先頭を切って自分たちのペースに持ち込む」と意気込んでマウンドに上がり、鋭く曲がるスライダーを駆使し、七回を無四死球3安打に抑え、相手に二塁を踏ませなかった。試合後には「ストライクゾーンに投げるために出力を抑えたので80点のピッチング。次は出力も上げたい」と頼もしさを見せた。 八回裏に継投した田中優飛(同)も大会初登板ながら安定感のある投球で無失点に抑え、佐々木広太郎(2年)も本塁打を打たれたものの立て直した。 次戦に向け、山田は「プレッシャーはない。『一戦必勝』の気持ちで戦いたい」と闘志を燃やす。【平家勇大、竹田直人】