植田日銀総裁が会見で自信たっぷりの真意…12月に追加利上げか? 識者が解説
前回とは打って変わって、自信たっぷりの記者会見だった。 日銀は10月30日と31日の2日間、金融政策決定会合を開き、政策金利である短期金利の誘導目標を「0.25%程度」に据え置いた。米大統領選の直前ということもあり、現状維持は織り込み済み。焦点は年内最後の次回12月会合で、今年7月に続く追加利上げに動くのかどうかだ。 【顔を見る】初の女性総裁誕生か? と名前が挙がった人物 植田総裁の会見では「時間的余裕」というキーワードへの質問が集中した。7月の利上げ後に株価が暴落するなど混乱したことを受け、植田総裁や日銀関係者が多用してきた表現で、マーケットはこれを「日銀はしばらく利上げを急がない」と捉えてきた。 ところが今回、植田総裁はこの「時間的余裕」という表現を使わず、「あえて使っていない」とまで発言。懸念されていた米国経済の下方リスクが減ったため、その表現を使う必要がなくなったのだという。 「12月の利上げへ一歩前進しました」 経済評論家の斎藤満氏はこう言って、さらに続ける。 「植田氏は賃上げや物価上昇率は目標に沿ったものであり、7月の利上げのネガティブな影響もないと答えていた。与党が過半数割れという選挙結果も関係ないとの認識で、思った以上に前向きな印象を受けました。よほどのことがなければ、12月に0.25%の追加利上げをして、政策金利を0.5%とするのではないか」 最近の1ドル=150円を超える円安も放置できなくなってきている。 「為替は0.25%への利上げを決めた7月と再び同水準の円安になってきている。景気後退懸念がなくなった米国は、どんどん利下げする状況ではない。日銀が利上げしないと日米金利差が縮まらず、円安も是正できない」(斎藤満氏) 政治の“介入”をさほど気にしなくていいことも植田総裁の自信につながっているようだ。 石破首相は、自民党総裁選直後の株価暴落に狼狽し、植田総裁と会談後、「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と発言、利上げにブレーキをかけた。しかし、「石破首相の本音はアベノミクス修正です。党内融和をおもんぱかってあの発言をしたが、旧安倍派が惨敗し、配慮する必要はなくなった。石破首相と植田氏の金融正常化への方向性は一致している」(斎藤満氏)。 いまの植田総裁にとって残された厄介は、金融緩和継続派の国民民主党が自公との「部分連合」でデカい顔をし始めることかもしれない。