待望の本命⁉ 〈トヨタ〉クラウン
いつの世も大人はサプライズが好きなものだけれど、このクルマの発表にはそれを通り越して、まさに“度肝を抜かれた”という人が多かったのではないだろうか。〈トヨタ〉クラウンだ。同時に4つのボディタイプを発表したクラウンだが、クロスオーバー、スポーツときて、待望の本命?(本流? 本丸?)のセダンが、この11月に発売。さっそく試乗が叶ったのでレポートしたい。
さて、先述のとおり“第3のクラウン”として導入されたクラウン セダンだが、実はこれは通称であって、WEBサイトなどを見ると単に“クラウン”と表記されている。余談だが、筆者はこの表記にこそ同社の、クラウン16代に折り重なった歴史の火を消さない決断や、先達への敬意が込められているのではないか、と感じて胸が熱くなった。 大胆なデザイン変更と、いきなりクロスオーバータイプからの発表という変化球で、先進と変革を押し出したかに見えて、押さえるところはきっちり押さえる生真面目さこそ、今の〈トヨタ〉を根底で支えるブランドの強さに繋がっている気がしてならない。
しかしセダンには、さらに想像の上を行くサプライズが用意されていた。それが、いわゆる“水素クラウン”の存在だ。そう、セダンには2.5ℓマルチステージハイブリッド(実はこちらも新開発)に加え、水素タンクを搭載するFCEVが用意されたのだ。このFCEVは液体水素をタンクに充填し、水素を燃料に車内で発電、その電力で走行するいわば、電気自動車の一種。……と聞くと、賢明なる読者諸兄の脳裏には、あのクルマが浮かぶだろう。そう、同じく〈トヨタ〉からすでに発売されているMIRAIだ。そしてそれはとても正しくて、今回、この水素クラウンは、パワートレーンやプラットフォームなど、かなりの部分をMIRAIと共用している。つまり、兄弟車といっても過言じゃないのだ。しかし、既存のパワートレーンをポンと載せ替えて「ハイ、水素クラウンでござい」という安直なことをしないのが今の〈トヨタ〉。なにがって、走りの質感が“ゲキヤバ”なんだから!