国債買い入れ変化に身構える市場、円安と需給逼迫で日銀動くか
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジストは、日銀が国債の買い入れ方針を会合結果の公表文に引き続き記載するかどうかが関心を呼んでいるとし、「仮にこれが削除された場合、マーケットは近い将来の量的引き締め(QT)開始シグナルと身構えるだろう」と話す。
二つの要因
追加利上げよりも早いタイミングで国債買い入れ減額が警戒される背景には二つの要因がある。
一つは、日銀による巨額の買い入れ額が維持されている結果、市場機能の改善が遅れていることだ。東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジストは、買い入れの実績や流動性供給入札の結果などから需給逼迫(ひっぱく)は明らかで「金利水準は市場が決める」状態にはほど遠いと指摘する。日銀は3月の公表文の欄外に、国債の買い入れは「市場の動向や国債需給などを踏まえて実施していく」と記している。
もう一つの要因は、円安を巡り財務省の対応に注目が集まる中、日本の単独介入では効果が限定的との見方が根強いことだ。
ヒントになるのは円高が進んでいた2003年だ。同年3月に就任した福井俊彦総裁(当時)は1年間で4回の量的緩和拡大を行い、同時に財務省が大量の円売り介入を実施。結果的に金融政策と通貨政策のポリシーミックスが実現した。今回は量的引き締めと円買い介入と方向は逆だが、実現すれば整合性のあるポリシーミックスとなり、円安に歯止めをかける効果が期待できる。
選択肢
日銀は月5回の買い入れオペを行っている。月末には翌月の買い入れ予定、四半期末には翌3カ月分の予定を公表しており、買い入れの減額ないし減額方針を表明する機会は頻繁にある。
3月のマイナス金利解除を受けて、日銀の政策手段は短期金利に変更された。SMBC日興の奥村氏は、国債買い入れは政策手段でなくなったため、日銀は機械的に買い入れを減額していく可能性が高いと指摘。日々のオペで買い入れ額をいじることは避け、四半期に一度の買い入れ予定で淡々と減額方針を示していくのではないかとみる。決定会合後の公表文で減額方針を明記することもあり得るかもしれないと言う。