孫文の歴史的演説から100周年…トランプ新時代に高まる「大アジア主義」の再評価
孫文の警告
《西洋人は自分達だけが真の文化と文明を持ち、独自の文化や理念を持つ他の民族は文明に反抗する野蛮人だと考えている》 また、孫文は、こうも述べました。 《このアメリカの学者は、アジア人の覚醒を文明に対する反乱とみなしている》 「このアメリカの学者」とは、ロスロップ・ストッダード(Lothrop Stoddard)という名の博士号を持つアメリカ人でした。孫文「大アジア主義」演説の4年前の1920年に、ストッダードは『白人の世界支配に反抗する有色人種の台頭』(The Rising Tide of Color Against White World-Supremacy)と題する本を出版しました。また演説から2年前の1922年には、『文明に対する反乱:劣等人の脅威』(The Revolt Against Civilization: The Menace of The Under-Man)と題する本を出版しました。 題名が示しているとおりストッダードが唱えたのは、白色人種は至高の存在であって世界を支配する権利を与えられており、それに抵抗する有色人種は「劣等人」(under-man)であり白色人種が生み出した文明に対する脅威であるという人種差別主義に基づく白色人種中心の世界観でした。 ストッダードの著作は様々なヨーロッパ言語に翻訳され、ヨーロッパ各国でベストセラーとなり、あたかも聖書のように扱われていると孫文は演説で述べています。事実、ストッダードの著作はニューヨーク・タイムズ紙で極めて肯定的に書評され、当時のアメリカ大統領のウォーレン・ハーディングから絶賛されました。 ストッダード『文明に対する反乱:劣等人の脅威』の表紙は、「劣等人」である有色人種が白色人種の都市で反乱を起こしている光景を描いています。ゴリラのように描かれた有色人種の暴徒の後ろに、眼鏡を掛け額が広い鷲鼻の顔が描かれています。これはユダヤ人を差別する際に描かれる典型的な顔立ちです。実際、ストッダードは熱烈な反ユダヤ主義者でした。