創業家一族の公私混同、メスを入れたら追放された星野リゾート代表/「ファミリー企業あるある」を乗り越えた事業承継の舞台裏 ~代表 星野佳路氏インタビュー前編
◆経営一族の既得権益を正そうとしたら、家業から追放
帰国後、星野氏は星野温泉旅館(現 星野リゾート)に入社したが、社内の重大な問題に直面する。 「当時は会社の資産と経営一族の資産がごちゃ混ぜになってしまっていました。これは日本中どこでも、若い経営者が一番苦労する課題ではないでしょうか」 ファミリービジネスにおいて、しばしば見られる課題だ。 「既得権益を得てきた経営一族」と「自分が貢献した分のリターンのみ得られるのが当然と考える若い経営者」との衝突が生じる。 星野氏は、身内である経営一族に対して「きちんと線引きをしないといい人材は集まらないし、企業の成長にも、税法上も問題がある」と提言する。 しかし、猛烈な反発を受け、わずか半年で辞めさせられてしまう。時はバブル経済真っ盛り、1989年のことだった。
■プロフィール
星野リゾート 1914年、軽井沢に「星野温泉旅館」を創業。1995年に星野リゾートに名称を変更した。現在、運営拠点は「星のや」「OMO(おも)」「界」 5 ブランドを中心に、国内外 68 カ所に及ぶ。1991年から佳路氏が4代目の代表取締役社長に就任した。取扱高は822億円(2023年11月)。