「絵は“生きがい”であり成長」自閉症と場面緘黙症 2つの障害を乗り越えたアーティスト田中翠恵さんの描く“あたたかさ”
場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)とは、緊張や不安などから、人前で話すことができなくなる障害です。 翠恵さんは、このことと向き合った日々を多くの人に知ってもらおうと、自身のイラストと言葉で“絵本”としてまとめています。 「私は、小中学校までは、日直や発表の大事な時だけ小さい声で話すことはできました。しかし、高校入試の面接で、話をすることができなくなりました…」 筆談やジェスチャーなどで自分の気持ちを伝えていた高校時代。 悪気のない周囲からの言葉が重くのしかかりました。 「周りの人達は どうして話さないのかと聞いてきました。そのことでますます 場面緘黙症の症状が酷くなりました」 「『私もみんなと仲良しになりたいな~』、昼休みはいつも思います」 家族以外との会話ができない状態が続くなか、田中翠恵さんは22歳でグループホームに入所。そこで担当の職員から“電話での連絡”を提案されます。 これが、場面緘黙症を克服する転機となりました。 「私は『今変わらなきゃ、みんなみたいに一人で行動できない!』と思い、頑張ってみようと決意しました」 すると徐々に、電話であれば人と話せるようになったのです。 そのうち、近所の人と直接会話することができるようになりました。 そして、高校の時は話せなかった友達とも仲良くなり、25歳で場面緘黙症を克服したのです。 それ以来、話すことが苦手な翠恵さんのコミュニケーション手段だった絵が、“生きがい”に変わったのです。 「絵は、生きがいと成長ですね。絵がだんだん進化しているってのを、みんなに見てほしいなって思いが…」 ある日、田中翠恵さんの自宅に大きな荷物が届きました。 田中さんが次に挑戦するのは「100号」の大きさのキャンバス。 162cmもの大きさです。 「引き続き、絵の仕事を頑張ろうかなって思います」 「大きなキャンバスに細かく書くのはすごく根気が要り大変で、出来上がった時の“達成感”というのが忘れられない思いがあります」
10月からの1か月間、新潟県長岡市の国営越後丘陵公園で開催された『自閉症アーティスト ~成長の軌跡~ 田中翠恵アート展』の来場者からは、たくさんのメッセージが寄せられました。 コミュニケーションの“手段”から『生きがい』となった田中翠恵さんの作品には今、見る人の心に直接響くあたたかな思いが込められています。 田中さんの作品は、長岡市の公共施設「アオーレ長岡」や「ミライエ長岡」で開催している『アール・ブリュット まちかどギャラリー(12月13日まで)』にも展示されています。また田中さんはフェイスブックでも、新作などの情報を更新しているということです。
新潟放送