「マスク帝国」にほころび-テスラ投資家、6社束ねる経営手法を懸念
テスラ株を約60万株保有し、最近マスク氏の報酬に反対する書簡を書いたアマルガメーテッド銀行の最高持続可能性責任者アイバン・フリシュバーグ氏はマスク氏について、「利害が相反するパートタイムCEOが非常に綱渡り的な行動をしている」とみている。
「テスラの場合、ここ1年の業績と経営陣の主要メンバー離脱が全て、計画通りに進んでいないことと投資家が増大するリスクに直面していることを示唆している」というのがフリシュバーグ氏の認識だ。
今のマスク氏にとって、正念場は6月13日に開催されるテスラの年次株主総会だ。2018年に策定された巨額報酬を投資家が再び承認するかどうかが焦点となっている。
この米史上最大の報酬パッケージは、デラウェア州の裁判所が株主にとって最善の利益にはならないと今年1月に判断している。
マスク氏とこの記事で名前が出てくる他の人々は、ブルームバーグからの問い合わせに応じなかった。
一人二役
マスク氏は誰もが敬遠する業界で大きな賭けにでることで、地球上で最も裕福な人物の一人となった。同氏はリスクに向かって走り、工場の床で本当に多くの時間を睡眠に費やし、畏敬と反感が同居する経営スタイルを築いたと主張している。
しかしマスク氏には、6つの会社を同時に経営するもう一つの秘策がある。インナーサークルの人材を「一人二役」で起用することだ。
テスラとスペースXは2015年以降、材料エンジニアリング担当バイスプレジデント(VP)、チャールズ・キューマン氏を共有。テスラの「オートパイロット」ソフトウエアチームが助けを必要とした際にはスペースXのソフトウエア担当VP(当時)のジンナ・ホセイン氏が飛び入り参加し、ダブルワークで一時的にチームを運営した。
デラウェア州衡平法裁判所のキャサリン・マコーミック判事が記した意見書によれば、マスク氏は2020年、テスラ経営陣に対し、大量の自社製蓄電池「パワーパック」と共に「最も頭の切れるマイクログリッド設計者」をスペースXに派遣するよう指示したという。