決勝T進出へ錦織に味方するハードコート
いくらサーフェスが遅いとはいってもラオニッチがサーブの確率を戻してくれば、リターン巧者の錦織もそう簡単にブレークはできないだろう。まずは自分のサーブをしっかりキープ。そのためにはこの2試合で目立ったダブルフォルトは減らし、サーブからリズムを作って得意のリターンゲームでラオニッチのサーブにプレッシャーをかけていきたい。 誤解のないように記しておくが、仮に錦織がラオニッチにセットを落としたとしても、また、ストレートで負けたとしてもそこでチャンスが潰えるわけではない。だが、「負けても…」などと錦織が考えているはずはない。2週間前のパリで、この最終戦への出場切符を自力でつかみ取ったあの気迫が思い起こされる。 今年フルセットの勝負で9割の勝率を誇る錦織の勝負強さは、何も最終セットでだけ発揮されるものではないだろう。とてつもないプレッシャーの中で勝ちきった楽天オープンもそうだったように、数々の重圧を押しのけてきた錦織のメンタルは頼もしい。 ただ少し気がかりなのはフィジカルだ。フェデラー戦で痛めた錦織の右手首がどうだろうか。痛みがあれば、あのサーブを返すことも得意のラリー戦も厳しくなる。 「一日オフがあるし、しっかり回復させて次の試合に勝ちたい」 信じよう。そして、錦織らしいテニスができる状態なら、勝てる。もちろんストレートで。 (文責・山口奈緒美/テニスライター)