「リアルだった」荒ぶる少年少女の生き方から人生観も学んだ…紡木たく『ホットロード』の魅力
バブル真っ只中の時代、社会問題として注目されていたのが少年たちによる「暴走族」だ。その時代背景を受け、少年漫画などでも多く登場していた暴走族だが、そんな10代の彼らの揺れ動く感性を丁寧に救い上げ描いた少女漫画もある。それが、紡木たくさんによる『ホットロード』だ。 ■【画像】「そっくり!」漫画から出てきたみたい…実写映画『ホットロード』のんさん■ 『ホットロード』は『別冊マーガレット』(集英社)にて、1986年1月号から87年5月号まで掲載された作品だ。作品が誕生してすでに35年以上もの年月が経つが、今読み返してもその世界観に没入できる偉大な名作である。 今回はそんな『ホットロード』がどのような作品だったかを振り返ってみよう。
■不良はカッコいいものじゃない…暴走族の背景をリアルに取り上げた作品
『ホットロード』は、10代の非行に走る若者をテーマにした作品だ。主人公は14歳の女子中学生・宮市和希、そして和希が想いを寄せる不良少年・春山洋志。洋志は、のちに暴走族グループ「NIGHTS」のリーダーとなる。 本作は、母親との関係に悩む和希が春山と出会い、それぞれ成長しながら恋愛模様も繰り広げていくストーリーだ。 先述したように、80年代は暴走族の交通事故や暴力事件などが多発し、社会問題となっていた。しかしその一方で“不良はカッコいい”といった価値観もあり、テレビドラマなどでは主人公の不良たちが敵対する悪者を成敗するようなヒーロー作品も登場していた。つまり、実在の暴走族とはかなり乖離して描かれている作品が多かったように思う。 しかし『ホットロード』では、和希が暴走族に足を踏み入れていく様子が丁寧に描かれており、複雑な家庭環境や学校でうまくいかない様子や、さらに暴走族に入っても決して楽しいだけではない実情がなんともリアルだ。 作中で和希は男性から暴行を受けそうになるなど危険な目にも遭ったりもするし、洋志は自身の生活のため、日々ガソリンスタンドで必死に働いていたりもする。 『ホットロード』は「不良=カッコいい」といった単純な方程式ではなく、非行に走る少年少女の苦労や葛藤を描いているのが印象的だった。