全幅1.97mはデカすぎた!? 中身はよかったけど新規市場開拓ならず? 生産終了した[グランエース]に販売現場が思うこと
全長5.3m・全幅1.97m・全高1.99mの大型ボディをもったフルサイズワゴンのグランエースが、2024年4月で生産を終えていたことが分かった。取り扱いを続けたトヨタ販売店で、グランエースはどう映っていたのだろう。期待大だったのか、それとも5年での生産終了は予想通りだったのか。現場から寄せられた、グランエースに対するリアルな声をお伝えしていく。 【画像ギャラリー】全長5.3m!!トヨタのド迫力ミニバン「グランエース」をギャラリーでチェック(9枚) 文・佐々木 亘/写真・トヨタ
■グランドキャビン以上コースター未満が最初の印象
トヨタでアルヴェル以上の大人数が移動できるクルマと言えば、選択肢は2つだけだった。25~26名が乗れるコースターか、10名乗車のハイエースグランドキャビンだ。 コースターの購入層は非常に限られているが、法人向けの特殊な売り方ができる。乗用車的に簡単な送迎をするとなると、ハイエースグランドキャビンが選ばれ、相応に引き合いも多い。 単純に「人」をある程度の数乗せるというだけなら、ハイエースワゴンで十分だ。特にグランドキャビンは、法人ユースはもちろん、レンタカーとしての需要もあったように記憶している。 そこへ投入された6~8名乗車の高級ワゴン「グランエース」。当時の販売現場からは「個人へ売っていいのか?」「見込み客がいない」「クルマはどこを向いているのだろう」と、戸惑いの声が多く上がった。乗車人数はハイエースワゴン、価格はコースターに近いことから、「グラキャビ以上、コースター未満の半端なヤツ」と、存在を揶揄するような言い回しも飛び出すほどだ。 開発陣の意図した、上質なおもてなし空間へのこだわりは、販売現場にはあまり浸透しなかった。ただ、このクルマの存在を喜んだ営業マンも一定数いたのは事実だ。
■法人+アルヴェル=グランエースという図式
グランエースの登場を喜んだのは、トヨタディーラーの中でも法人をメインに扱う営業マンたち。ディーラーによっては特販部などと呼ばれる特別部隊だ。 特に、法人営業の強いトヨペット店とトヨタ店では、グランエースに多くの注文が入った。ダイナやプロボックス、ハイエースなどの商用車を多く保有していて、同時に乗用車としてアルヴェルを使っている法人客が、グランエースを注文していったという。 VIPや役員送迎のために使っていたアルヴェルよりも、大きくて人の移動に特化したグランエースは、ニーズに合ったようだ。グランエースの生産終了を嘆く、法人営業担当者は意外と多い。 「車内を乗員のためだけに使っているのが良かった」「ディーゼルターボのFRという変わった組み合わせが、社長のお眼鏡にかなった」と、肯定的な意見も多数聞こえてくる。 ただ別の法人営業担当からは「別にアルヴェルで十分」「中身は良いが見た目がバンでNG」という声も。良くも悪くも、300系ハイエースの面影を残しすぎたのが、短命に終わる要因だったのかもしれない。