『エイリアン:ロムルス』大胆不敵な戦略が張り巡らされた、シリーズ最大の異色作 ※注!ネタバレ含みます
青春映画のような香り
物語上の時系列でいうと、『エイリアン』は西暦2122年、『エイリアン2』はその57年後となる2179年。そして今回の『エイリアン:ロムルス』は、その中間となる2142年という設定だ。 主人公は、コロニーの採掘場で働く孤児のレイン(ケイリー・スピーニー)。劣悪な労働環境から逃げ出すため、アンドロイドのアンディ(デヴィッド・ジョンソン)や仲間のタイラー(アーチー・ルノー)、ケイ(イザベラ・メルセド)、ビヨン(スパイク・ファーン)、ナヴァロ(エイリーン・ウー)たちと共に、宇宙ステーションにある冷凍休眠装置を回収して、遠い彼方の惑星に脱出しようと計画する。ところがその宇宙ステーションは、「ロムルス」と「レムス」と名付けられた2つのブロックから成る、ウェイランド・ユタニ社のエイリアン研究施設だった。彼女たちは未知の怪物と遭遇し、未曾有の恐怖と立ち向かうことになる…。 本作の特徴としてまず挙げられるのは、主要キャラクターが非常に若いこと。レインとアンディは姉弟(のような関係)で、タイラーとケイは兄妹で、レインとタイラーは元恋人同士で、タイラーの従兄弟ビヨンはアンディを嫌っていて、ナヴァロはビヨンを慕っていて…という人間関係だけでも、ドラマが一本作れそうだ。若者たちが過酷な現実を抜け出して、遥か彼方にある希望の光を目指すというストーリーラインは、青春映画のような香りをまとっている。 このアイデアは、劇場版ではカットされていた『エイリアン2』のある場面からインスピレーションを得た。 「廊下を走り回る子供たちのショットがあるんだ。居住可能になるまでまだ50年はかかるテラフォーミング・コロニーで育つ子供たちって、どんなだろうと考えた。おそらく親と同じ仕事に就くことになるだろう。何の希望があるんだ?」(*4) エイリアンを過酷な現実のメタファーと考えるならば、この映画は「希望を抱いて旅に出た若者たちが、現実に打ち勝つことができず、無惨にも夢破れる物語」とみなすこともできる。ウルグアイ出身のフェデ・アルバレスが、果たして自分はどこまで行けるのだろうかと、自問自答していたことにも起因しているのだろう。確かにそのようなアプローチの「エイリアン」シリーズは、これまでにはなかったものだ。だがフェデ・アルバレスが仕掛けた戦略は、より高度で、より挑戦的だった。 それは、リドリー・スコットの偉大なる1作目と、ジェームズ・キャメロンの2作目をミックスさせてしまうという、大胆不敵なアプローチである。