がん×認知症の“併発”で死亡リスク増――医師「がん入院患者の2割」 大切なのは「本人が決める機会」…家族は?【#みんなのギモン】
■がんと認知症の併発で起きる問題
菅原委員 「がんと認知症の併発で死亡リスクが上がる背景に何があるのか。小川医師によると3つの課題が出てきます」 「1つ目が服薬管理。認知機能の低下で、薬を飲んだか分からなくなり、適切なタイミングで薬を服用することが難しくなります。例えば、抗がん剤を2回続けて飲んで用量オーバーになってしまう、薬を飲んだ記録をつけられない、といったことが起きるといいます」 「2つ目が、痛みや体調を伝える難しさです。痛みや体調不良があってもうまく伝えられなかったり、そもそも痛みがあったことを忘れてしまうことがあります。そのため、周囲が気づかないうちに体調が悪化していた、ということが起こり得ます」 「そして小川医師が最も重要な問題としているのが、治療方針を患者本人が決める機会を失うことです。認知症の患者は適切なサポートがあればきちんと自分で決めることができるといいます」 「しかし『認知症だから本人に判断が難しいだろう』と、家族や医療者だけで治療方針を決めてしまう恐れがあります。患者さんがきちんと納得できずに治療が始まるとどうなるのか、小川医師はこう指摘します」
■医師「本人も病院側も戸惑うケースが」
小川医師 「認知症の人は、周りに負担をかけまいと思って、説明が分からなくても『はいはい』とうなずいてしまいます。そうすると、それを見た担当医の先生と看護師は本人が分かったんだと思ってしまって治療を決めます」 「それで実際に治療に入ると、本人が実は全然理解ができていなくて、本人も戸惑って、病院側もどうしていいか分からなくなる、ということはよくあります」 市來玲奈アナウンサー 「認知症と併発するがゆえの難しさだなと感じました。患者さんご本人の納得もとても大事なので、丁寧なサポートも必要で、病院の皆さんも本当に大変なことになりますよね」
■97.7%の病院が「困ったことある」
菅原委員 「日本対がん協会が、がん患者の治療にあたる全国の病院に聞いたところ、認知症のあるがん患者への対応で困ったことがあると答えたのが97.7%。ほとんどの病院で難しさを感じています。具体的にどのような難しさがあるのでしょうか」 「『本人が(治療について)判断できない』(93.2%)、『在宅で(の治療を)支える家族がいない(76.7%)』、『食事管理ができない』(63.1%)、『痛みなどを伝えられない』(63.9%)、『入院中のリハビリを拒否する』(59.8%)などがあります」 「認知症の併発は治療全体に大きな影響を与えていることが分かります。しかし、がん患者が入院する時に認知症の検査を行っている病院はまだ2割にとどまっていて、見過ごされているケースが多いということです」 鈴江アナウンサー 「専門的な知識がある医療機関でも、併発に対する備えはまだまだという現状なのですね。家族からすると、認知症にもがんにもそれほど詳しくないとなれば、ダブルで併発となったらどう対応していいのか、どうサポートができるのか本当に大きな悩みとなりますね」