「納得できないので従わない」トラブルメーカーの社員に「転勤命令」も、2か月間“ボイコット”…裁判所が下した判断は
裁判所の判断
裁判所は「配転命令も懲戒解雇も有効」と判断した(今回は配転命令にしぼって詳述する)。 どのような配転命令が無効になるか? については、過去に最高裁が基準を打ち出している。 「当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではないというべきである。 業務上の必要性についても、当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、業務上の必要性の存在を肯定すべきである」(最高裁 S61.7.14) 上記を要約すると、次のようになる。 ■ 業務上、必要性がなければ配転命令は無効。 ■ 必要性があったとしても、以下の3つの場合は配転命令は無効。 ・不当な動機・目的で転勤命令が発令されたとき。 ・労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき。 ・上記2つに匹敵するような特段の事情がある場合。 この基準に照らし、今回の裁判所は以下の理由を示して「配転命令はOK」と判断した。 ■ Xさんの勤務先を変更する必要性あり D社からXさんの会社に対して「Xさんがいる限り要員の補充はできない」などの苦情が出ていた。D社が担当しているトラックの台数が減らされると会社の輸送業務に大きな影響が出る。業務縮小を避けるためにも、Xさんの勤務先を変更する必要性があった。 ■ Xさんの転勤先候補であるB営業所には欠員が出ており、欠員を補充する必要性もあった。 ■ Xさんに著しい不利益なし Xさんは「B営業所では身体的負荷が大きく、腰痛を抱えている私には不利益が甚大である」と主張するが、A営業所でも腰に一定の負荷がかかる仕事がある。 ■ 会社が不当な動機・目的を持っていたとは認められない