「7万5000円」で売り飛ばされ、首輪で拘束された女性…中国で横行する人身売買の闇
● 雲南省から誘拐・転売され 強姦と妊娠を繰り返した 国営新華社によると、2023年4月、徐州市中級人民法院(地裁に相当)は、董被告を含む6人に懲役8~13年の判決を言い渡した。董被告に対しては虐待罪で懲役6年6月、違法監禁罪で同3年とし、併合罪の規定で同9年の判決となった。判決や発生当初の発表などをまとめると、一連の事件はおおむね以下のような経緯だったとされる。 小花梅さんは1998年の年初、雲南省の村から誘拐され、5000元(約7万5000円)で江蘇省の男に売られたが、同年5月上旬に行方不明になった。 その後、約200キロ離れた河南省の飲食店で「流浪」していたところを店の経営者夫妻に拘束され、同年6月に再び売られて豊県にたどりついた。 3000元で小さんを買ったという男は、董被告の父(故人)に5000元で転売した。董被告の父は当初から息子の嫁にする意図で買ったとされ、1998年に正式な結婚の手続きも行っている。 小さんと董被告の間には、1999年に長男が誕生し、その後、2011~2020年の間に7人が生まれた。 小さんは董家に来た当初は自分で身の回りのことができ、コミュニケーションも可能だったが、第2子を産んだころから精神障害が悪化し、とくに2017年に第6子を産んだあとに悪化が加速した。 2017年7月から董被告は、鎖や縄で小さんを拘束するようになり、食べ物を十分に与えず、水や電気がなく、日が当たらない劣悪な環境に置いた。小さんは精神分裂症(統合失調症)と診断された。
● ネットで批判が上がった 「人身売買は不問」の判決 しかし判決に対して再びネット上で批判の声が上がった。矛先は、とくに董被告が虐待罪と違法監禁罪のみで有罪となったことに向けられた。理由は2つある。 1つは、董被告が人身売買罪に問われなかったことだ。中国では人身売買の買い手側の罰則は「3年以下の懲役」と定められている。最高刑が5年未満の罪は公訴時効が5年と定められ、董被告は人身売買については起訴されなかった。 一方、人身売買の売り手側は死刑が最高刑だ。最高刑が死刑か無期懲役の罪は、20年の時効を過ぎていても罪状が悪質である場合は起訴できる。 新華社によると、この事件で人身売買の売り手側の5人はこの規定に従って起訴された。なお、同じく売り手側だった他の2人については「罪状が比較的軽微」として起訴されなかったという。 中国では人身売買の買い手側の罪が軽いことにかねて批判があり、この事件が発覚した直後からあらためて注目が集まっていた。判決を機に買い手側の量刑を引き上げるべきだという議論が再燃した。世論に押される形で、将来的に法律改正などにつながる可能性もありそうだ。 ● 強姦罪が不問にされたのは 「社会の安定」のためか もう1つの理由は、董被告が強姦罪に問われなかったことだ。小さんは精神疾患が悪化したという17年以降も出産しているにもかかわらず、判決に関する官製メディアの報道は強姦罪について触れていない。