バレンタインのコピー「義理チョコで人間関係を作ろう」では全然ダメ…女性の共感が止まらぬ"正解コピー"とは
■女性の共感が止まらぬ“正解コピー”とは ---------- 渡したくて買ったけど、渡せなかった。 ---------- 商品を渡せなかったのだから、チョコレートを売りたいときのキャッチコピーとしては否定的な意見が出るかもしれません。しかし、リアルに感じませんか。 実はこのキャッチコピー、私の大学時代の友人が発した言葉なのです。何人かの、別の友人たちはこの言葉に触れて「すごくわかる」と共感していました。つまりこのキャッチコピーは「誰かに伝えようとして、結果的に複数の女性の共感を得たもの」と言えるのです。 誰かを思い浮かべて生まれたアイデアのほうが、結果的にみんなに伝わるもう1つ例を挙げましょう。私が敬老の日の啓発広告として書いたキャッチコピーです。 ---------- ばあちゃんはいつも、俺より長く手を振っている。 ---------- このキャッチコピーは、すでに他界した私の母方の祖母を想(おも)って書いたものです。母の実家は熊本県の小さな町にありました。小学生の頃、夏休みには決まって熊本に帰り、1カ月を過ごしていました。 夏休みも終盤となる8月末。叔父に空港まで送ってもらうのですが、祖母は車に乗った私たちが見えなくなるまで(おそらく見えなくなっても)手を振っていました。その姿をずっと覚えていて、敬老の日をテーマにした仕事がきたとき、課題と祖母の情景が結びつき、このコピーが生まれたのです。 このキャッチコピーは、先ほどのバレンタインデーの言葉と同じく、私という1人だけの体験をもとにしています。 しかし、このキャッチコピーが世に出るや、多くの人から「自分の祖母を思い出して涙が出た」「このコピーを読んで、久しぶりに祖母に会ってきた」「私も似たような想い出がある」という言葉をいただきました。 つまり、たった1人の経験をもとに書いた言葉が、結果的に多くの人の共感を得たのです。「みんなが共感する敬老の日のメッセージはこんな感じだろう」というスタンスで書いていたら、こういう経験はできなかったはずです。 アイデアは、結果的には「みんな」に伝わるほうがいい。しかし、発想の過程においては、みんなを見るのではなく、たった1人の誰かを想像して発想すべきである。 課題に最適な誰かを思い浮かべて行うように心がけてください。 ---------- 西島 知宏(にしじま・ともひろ) クリエイティブディレクター 1977年奈良県出身。早稲田大学大学院修了後、2003年電通入社、クリエーティブ局配属。広告クリエイターとしてTCC賞、ACC賞、スパイクスアジア、ニューヨークフェスティバルなど国内外の数々の広告賞を受賞。2007年独立し、クリエイティブブティックBASEを立ち上げる。出身地である奈良県の県紙、奈良新聞社の非常勤取締役就任。2015年、デジタルメディア「街角のクリエイティブ」を立ち上げ、編集長に就任。月間100万PVのメディアに成長させる。2016年、初の著書となる『思考のスイッチ~人生を切り替える11の公式~』(フォレスト出版)を上梓。Amazonビジネス企画ランキングで1位を獲得する。その後、韓国版を出版。広告業界で培ったクリエイティビティで世の中の様々な課題を解決すべく、日々奮闘中。 ----------
クリエイティブディレクター 西島 知宏