【インタビュー/前編】高畑淳子さんの肌にハリを与える秘密兵器とは?
高畑淳子さんの魅力がフルに生かされた主演映画『お終活 再春! 人生ラプソディ』が公開される。70代を目前にした今も、その大らかな存在感とリアルな演技はキラキラと輝きっぱなし。このパワー、この迫力、この元気の素はどこから来ているの? 質問するとその答えはあっちに行ったりこっちに行ったり。爆笑続きのインタビューとなった。
『愛の讃歌』を歌いあげます
5月31日に公開される映画『お終活 再春! 人生ラプソディ』の中心人物は、高畑淳子さんと名優・橋爪功さんの熟年カップル。このふたりが並んでいるだけで、ほっこり笑えてちょっぴりどこか哀しくて、これからどんな物語が始まるのか、わくわくする。 「橋爪さん、大好きなんです。世の中にあんなすごいオッサンはいないな、って思います。悪口ばかり言ってますけどね(笑)。私が近づくと、『お前はうるさいからあっちに行け!』とか言うんですよ。娘役の剛力彩芽さんが来ると、ニヤニヤうれしそうに話しかけるくせに(笑)。 橋爪さんは撮影のとき、家のセットに入ると、まずソファにごろんと横になって昼寝を始めるんです。そうやって自分の家にいるように、日常の生活がそこにあるみたいに、わざとらしく作り上げないようにしているのね。それが今回、橋爪さんと私のテーマでした」 この老夫婦、娘が結婚して家を出て行き、ふたりだけの暮らしが始まる。ところが夫に認知症の兆候が出てきて、しぶしぶデイサービスへ。一方妻は、思い切ってシャンソンのレッスンに通い始める。ステージで歌うという、若い頃の夢を叶えるために。
本作は21年に公開された『お終活 熟春! 人生、百年時代の過ごし方』の続編。前作の評判は上々、さらにバージョンアップした意欲作だ。 最初に台本を読んだときの印象は? 「実は私、台本が読めないんです。『こういう仕事のオファーが来ましたけど、やりますか?』って渡されても、大体3ページも読まないうちに寝てしまいます(笑)。台本だけじゃ、その作品の良し悪しなんてわからないんですよ。 今までで1回だけ、チェーホフの『三人姉妹』の台本だけは、すらすら読めたし面白かった。けれど不思議なもので、ちゃんと読める台本というのは、舞台の上でそれ以上発展しないんです。 逆に『スリー・トール・ウィメン』というピーター・シェーファーの台本は、難解で3ページも読めなかったんですけど、いざ芝居になったらすごく面白かった。 ですから台本で判断はしないですね。あまりアテにならないので」 では出演作を何で判断するか、というと。 「共演する俳優さんとか、監督さんのお人柄とか(笑)。 今回、すごい豪華キャストでしょ? 私の好きな俳優さんが多いなって。橋爪さんはじめ主演クラスの、1本映画が撮れる方ばかり。それに私、石橋蓮司さんの大ファンで、石橋さんがしゃべっているだけで、うれしくなっちゃう」 ヒロインの高畑さんはラスト近く、ステージでシャンソンを歌いあげるシーンも。 「いやもう、穴を掘って入りたいです(笑)。でもこれは普通の主婦が、人生最後に夢を叶えたという設定ですから。うまい下手はともかく、人前で歌う、その気持ちが大事なのだ、と。上手に歌おうとか、そういう気持ちじゃなくて」 ドレスアップしてステージに立つその姿は、さすがの美しさ。取材している最中もきりっとした表情で、失礼ながら年齢を感じさせない。 「これはね、ヘアメイクさんが頑張ってくださったおかげです(笑)。地毛をギューッと引っ張ってからカツラをかぶせていますから。 柴田理恵さんもほら、アップにしてポニーテールにしてますでしょ? ベテランの女優さんは、そうやって縛り上げている方、多いです。内緒ですけどね(笑)。 もう、ギューッと顔の皮膚が上がるので、カツラはなかなかの武器になるんですよ(笑)」