1個100円以上の価値がある。空っぽの缶が3000円でヒットした理由
ローカルヒットを生み出すために大切なこと
──秋元さんには、ローカルヒットを生み出すために日々どんなところに目を向けられているかをお伺いしたいです。 秋元:僕が意図していることは2つあります。 1つは、観察です。ビジネスセンスが高い人たちはとにかく情報感度が高い。これは、観察に尽きると思っています。 例えばテレビCMを、日本のトップマーケターたちが誰向けに何を伝えるかを考えて作ってる広告だと思って観察し始めると、何もかもがビジネスのヒントになる。 もう1つは、抽象化して理解する、タグ付けしてものを考えることです。 例えば新聞の販売店は、差別化が効かない、値引きされない、商圏が狭いというようにタグをつけられます。そこから3つのタグで脳内検索すると、本屋も商圏が狭くて、どこでも同じ本を売っていて値引きもできないと気づくんです。その中でも、伸びてる本屋の事例に何があるかを考えてみよう、新聞屋だったら何ができるかな、というように。 こんなふうに具体と抽象を行き来しながら、似たような何かを探すことを常にしています。 ■小さな組織から大きな共感を ──最後に、ローカルや小さな組織から共感を波及させていくための秘訣があれば教えていただけますか。 石川:僕は、等身大というキーワードをすごく意識しています。 中小企業が何か親子の絆を深める缶を作りました、と言ってもそれだけでは話を聞いてくれないと思います。 Sottoはありがたいことに賞もいただいて、そこで評価していただいた時のコメントを読んでみると、ただ新商品をリリースしたことが良かったわけではありませんでした。 発売に至るまでの良いことも悪いことも全部正直に書いてあるストーリーが良かった、と。売り上げもすごく下がって、業界は苦しくて、だけどそんな中で跡継ぎが会社の人を巻き込んで頑張って、それでやっと完成した商品なんです。 そういうところで中小企業のスモールビジネスが共感を呼んで、世の中に伝えていくっていうところにもヒントがあるんじゃないかなと僕は思っています。 自分たちの等身大を正確に、背伸びせず伝えることに価値があると思います。 「ないもの尽くし」の小さな組織やローカルな地域でも、ヒットを生み出すことができる。プロダクトありきではなく、社内ミッション・ビジョンの策定や等身大の姿を届けることが共感を広げていく鍵になっていた。商品を磨き、ストーリーを紡いだプロセスはあらゆる事業の作り手のヒントになるだろう。
督 あかり