【専門家解説】午後10時半の戒厳令はメディアにわざと知らせるため? 韓国・尹大統領は「本気を出していなかった印象」 内乱罪成立なら「極刑」 対日関係に影響は
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が3日、政治活動などを禁止する「非常戒厳」を発令しました。その数時間後には解除しましたが、現地では混乱が続いています。 「非常戒厳」が出された背景は何なのでしょうか。韓国政治はどのような道を進むのでしょうか。朝鮮半島の情勢に詳しい龍谷大学の李相哲(り・そうてつ)教授の解説です。
専門家も「びっくり仰天」「北朝鮮で不穏な動きがあったのかと」
ユン大統領は4日夜「韓国はすぐ崩壊してもおかしくない。憲法の秩序を守る」として非常戒厳を宣言しました。非常戒厳は、大統領が戦時や公共の安寧秩序を維持する必要がある場合に宣布することができます。 李教授:びっくり仰天でした。何か北朝鮮で不穏な動きがあったのかと最初は思いました。そのくらい大ごとです。
この「戒厳令」何かヘン? 「本気じゃなかったのでは」指摘も 大統領の狙いは
非常戒厳には以下の内容が含まれました。 ・国会と地方議会、政党の活動、集会、デモなど一切の政治活動が禁止されます。 ・世論操作、フェイクニュースによる扇動の禁止 ・すべての報道・出版は戒厳司令部の統制を受ける この「戒厳令」に国会は猛反発しました。国会で過半数を占める野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は「違憲で反国民的な戒厳宣言」と批判し、少数与党「国民の力」のハン・ドンフン代表も「戒厳令の宣言は間違っている」とコメントしました。国会(定数300)では、議員190人が「戒厳令」の解除を求める決議に賛成し、可決されました。その約6時間後、ユン大統領は「戒厳令」を解除しました。 李教授:韓国の憲法で、国会で過半数の賛成により議決すれば、戒厳令は解除しなければならないと決まっています。解除要求が出ているのに戒厳令を続ければ、ユン大統領は内乱の罪に問われるので、解除せざるを得ませんでした。 (Q.議員が国会に集まることができたのは、野党などが戒厳令への準備を整えていたということでしょうか) 李教授:ユン大統領側も本気を出していなかったという印象です。通常、戒厳令を出す時は、夜中や明け方に軍隊が出動して、まず放送局を占領して野党党首などを逮捕し、市民たちに町に出ないよう手を打ちます。しかし今回ユン大統領が戒厳を発表したのは午後10時半。メディアにわざと知らせたようにみえます。ユン大統領は今の状況を打開するために、国民に今の状況をありのまま伝えたいという気持ちが強かったのだと思います。